研究課題/領域番号 |
17K03295
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
中島 成久 法政大学, 国際文化学部, 教授 (80117184)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クリンチ・スブラット国立公園 / ジャンビ州 / ブンゴ県 / ムランギン県 / 生産林 / 違法入植 / アブラヤシ / コーヒー |
研究実績の概要 |
平成29年度はクリンチ・スブラット国立公園(KSNP)に隣接するジャンビ州ブンゴ県ムランギン県での予備調査を行った。ブンゴ県ではコミュニティでの森林管理がうまく機能しているバティン・ティガ・ウル郡ルブック・ブリンギン村でのアグロフォレストリーの実態を調査した。村落林2350haは元は3000haの保安林であったが、2007年世界銀行の村落合意プロジェクトにより村落林として利用し、運営がうまくいっている事実を知った。 つぎに、ムランギン県ではKSNPへの違法入植が深刻な問題となっているルンバ―・マスライ郡での予備調査を行った。ここでの違法入植はKSNPが1992年住民とは何の相談もなく、突然決められたことと大いに関係する。1992年以前住民は利用していた土地へ入ることを禁止され、スハルト退陣後14000haの土地が生産林としてスレストラ社に与えられ、森林伐採が行われた。その後他州からきた移住民が住み始め、主にコーヒー生産を始めた。2006年インドネシア農民連合のある人物が入植者の組織化を進め、さらに入植が進み、現在では2万5000人余りに達していて、郡の人口25,000人とほぼ同数に達している。海抜700メートル以下ではアブラヤシが栽培可能であるが、それより高いところではコーヒー生産が卓越している。 入植者の多くは住民票を発行されていない。それは国立公園内への入植であり、地元民の同意を得ていないほか、ムランギン県でも認めていない。ところが、今やジョコウィドド政権にも近いインドネシア農民連合が彼らを支援している状況で、地元民も地方政府も手を出せない状況に至っていて、彼らの間の緊張は一触即発の状態である。 こうした違法入植はインドネシアの至る所で起きていて、この問題の早期解決が求められるが、時間が経てばたつほど入植者の権利意識も強まり、「取った者勝ち」になる事態も考えられ、新たな紛争の火種となっている現実を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画段階で想定していたジャンビ州のブンゴ県とムランギン県での実態調査が実施でき、今年度の本格的な調査の足固めができたという点でおおむね順調に進展しているといえる。 予想外であったことは、ルンバー・マスライ郡での違法入植者がアブラヤシ栽培のためではなく、コーヒー栽培を行なっている点である。こうした住民の目的は、「自分の土地」を持つことであり、そこではコーヒーの選択も、アブラヤシの選択も同時に可能ではあるが、入植した土地がどの産物にふさわしいかによって、生産する産物を決めているという事実がわかった。 地元民、移住者を含めて、「小農」と呼ばれる人々がどのような条件で自分の生産する産物を決定しているかをもっと詳細に研究する必要がある。 もう一つは、ブンゴ県ではアブラヤシ開発のため土地を失った狩猟採集民オラン・リンバの村があり、彼らの調査を今年度行うことが必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ルンバー・マスライ郡での集中的な調査のほか、スンガイ・マナウ郡での地元民の生産林の利用実態を詳細を調査し、アブラヤシ、ゴム、コーヒー、コメ、砂金採取などの産業を地元民がどのように行っているかを調査する。 さらに、アブラヤシ開発と狩猟採集民オランリンバの現状を調査するために、ブンゴ県だけではなく、ブキット・ドゥアブラス国立公園でのオランリンバの実態を調査する。 来年度は、学会発表と英語での論文を執筆することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
インドネシア経済における韓国のプレゼンスが大きく、韓国がインドネシアの木材、パルプ産業のほか、アブラヤシ産業のどの程度関わっているかを実証的に知ることが必要とされている。2018年の8月初旬に1週間韓国を訪れ、このような問題について関係機関、研究者と交流を深め、問題式を広げる予定である。
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