研究課題/領域番号 |
17K03304
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
上田 達 摂南大学, 外国語学部, 准教授 (60557338)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 東ティモール / ディリ / 都市 / 集落 / 共同性 |
研究実績の概要 |
2017年度は文献資料の収集と現地調査を実施した。文献資料については、国内外の東ティモール地域に関する研究および都市、国家、ネーションに関する人類学的研究の文献を購入・複写して講読に努めた。東ティモール滞在時には現地語で書かれた出版物も入手した。 現地調査は二度に分けて実施した。2017年8月は首都ディリに滞在して、調査予定の集落で予備的なインタビューを行った。また、NGO関係者と面会して、ディリのみならず東ティモール全体における土地問題についての概況を得た。また、若者の問題を取り扱うNGO団体を訪ねて、ディリ周辺の集落における若者の社会問題についてインタビューを実施した。2018年2月には首都ディリの集落でインタビュー調査を行ったほか、内陸部のエルメラ県を訪問した。 初年度の調査を通じて、調査予定の集落をほぼ定めることが出来た。国内各地からの移民からなる同集落で実施したインタビューを通じて、1.血縁関係や姻戚関係だけでなく、独立闘争時の抵抗運動を通じて培った人的ネットワークが、集落での居住開始のきっかけとなっていること、2.こうした関係が居住後も維持され、時宜に応じて人々の社会生活の中で意味のあるものになっていること、がわかった。また、同集落の社会問題を解決するべく開催された和解行事が、今なお住民の間で強い影響力を持っていることがわかった。同行事は、東ティモールで広く実践されているカトリックの信心業を基軸として行われているため、ディリ以外の他地域において、同様の信心業の実践についても注意を向けなければならないことが示唆された。エルメラ県への予備的訪問を実施できたことなど、次年度以降の調査の足がかりを築いたことも本年度の研究成果として付記しておきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二回の東ティモール渡航を通じて、首都ディリにある集落を中心的な調査地として定められたのは第一の成果として挙げられる。同集落において村長らとも面会しており、次年度以降の調査の足がかりを確保できた。都市集落で行われている文化的な実践を、人々の出身地との繋がりの中でみる必要があることも、現地調査の中で得られた成果であるが、地方への渡航は準備段階にとどまっている。まずはディリでの情報収集を優先して、その後で地方都市での調査を行っていきたいと考えている。 他方、ディリにある他の集落の概況については、まだ情報が充分に得られていないため、次年度以降、状況に応じて他の集落との比較検討を実施していきたい。文献資料収集については、新しいものを含めて国内外の関連する諸研究を手にすることが出来ているため、これらを参照しつつ論点の明確化に努めたい。また、2017年11月に行った研究発表の折には、国内外の他の東ティモール研究者と意見交換を行えた。 研究成果の公表についても、おおむね順調に進んでいると判断しうる。これまで行ってきた現地調査の成果は2017年11月に開催されたシンポジウムで発表したほか、学術雑誌に投稿して掲載された。外国語での論文執筆と公表が、二年目以降の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、現地調査と文献資料調査の二つを軸に研究を進めていく。2018年度も東ティモールに渡航して、ディリの調査地で情報のフォローアップに努めるほか、エルメラとラウテムなど、地方での調査も視野に入れて準備を進める。文献資料収集については、英語で書かれた東ティモール研究関連書籍を中心に、引き続き収集と講読に務めたい。 こうした調査の他に、研究成果の公表も進める。2018年度前半に国内学会と国際学会での発表がそれぞれ決定しており、これまでに得た成果を発表する。とりわけ、後者については、国際的な研究ネットワークを構築するうえで重要であるため、すでに発表が決定しているもののほかにも、積極的な参加を検討する。こうした口頭発表の成果は雑誌論文としてとりまとめていく。
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