対馬と釜山における現地調査を行い研究を進めた。この年は日韓の輸出管理問題に関連した日韓関係の悪化のあおりを受け、対馬では予約が大幅に減少しており、二国間観光の弱点があらわになっていた。これまで本研究では、対馬の観光には日本人移住者を含めた多様な日韓のミドルマンたちが存在し、地元の人々と韓国人をつなぐ役割を果たし協働関係を築いていたことを明らかにした。また観光業に携わる日本人移住者や韓国人移住者が対馬に定着し地元と良好な関係を築くようになったことで、外部からのまなざしがもたらされ、地元の観光観に影響を与えていた。この時の観光客の大幅減少に際しては、ミドルマンたちの相互の助け合いや、少ない観光客に対する厚いもてなしが見られた。その一方で、相互に国家に対する憤りが観察され、個と国家のイメージの乖離が明らかになった。韓国からの観光客を一方的に受け入れる現状である観光の特性から、常に日本対韓国あるいは、日本人対韓国人の関係枠組みに回収されやすいことが指摘できる。ミドルマンたちは学びや音楽などを通じた日韓交流によって地元との連携を強める工夫を行うなどして、引き続き協働関係を強めていたが、自治体では韓国に依存した観光形態からの脱却が模索されており、観光活動の変化が注目される。またコロナウイルスの感染拡大が観光に与える影響は今後検討されなければならない課題である。
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