今年度は,科研費の研究成果として,所属先の国立歴史民俗館で特集展示「石鹸・化粧品の近現代史」を開催することができた。この展示では,近代における大手の化粧品・トイレタリーメーカーであった平尾賛平商店(のちのレート)や中山太陽堂(現・クラブコスメチックス),伊東胡蝶園(のちのパピリオ),丸見屋商店(のちのミツワ石鹸),小林商店(のちのライオン)などの商品と広告を中心に展示した。 展示の反響は大きく,会期以前からSNSで数多く取り上げられた。その要因としては,実物にこだわった展示や,レトロなデザインに対する関心の高さ,情報量の多さなどが考えられる。 特集展示は2回の展示替えをし,第Ⅰ期(12月3日~1月26日)は明治・大正期,第Ⅱ期(1月28日~3月22日)は昭和戦前・戦時期,第Ⅲ期(3月24日~5月6日)は昭和戦後期を中心にした。ただ,第Ⅲ期の展示は,新型コロナウイルスの影響で公開できていない。マスコミやSNSでの反響が大きかったので,残念に思っている。 また,株式会社コーセーから借用していた『東京小売粧報』『日本粧業』や『週刊粧業』,『日本商業新聞』の写真撮影は終了した。他にも,明治時代の『東京小間物化粧品商報』や『日本粧業』の1945~1956年の資料は収集できた。 さらに,今後の研究と特集展示のため,中山太陽堂や平尾賛平商店,久保政吉商店,伊東胡蝶園,丸見屋商店,小林商店,花王株式会社長瀬商会(現・花王)桃谷順天館,資生堂,カネボう,コーセー,マックスファクター,ポーラなどの商品,広告類を収集した。これらの資料購入によって,特集展示は,展示替えをする際,ほぼ全面的に入れ替えることができた。来館者には展示替えのたびに楽しんでいただけたと思う。 ただし。収集した情報量が多くなりすぎたため,資料を十分に分析できていない。今後はさらなる詳細な分析が必要となっている。
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