研究課題/領域番号 |
17K03310
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
永田 貴聖 宮城学院女子大学, 現代ビジネス学部, 准教授 (80551093)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 複数エスニシティ・ナショナリティ / フィリピン人移民 / 在日コリアン / コミュニティ・カフェ / 東九条 |
研究実績の概要 |
令和3年度も引き続き、京都市・東九条地域を集住地域とする在日コリアン、日本人、フィリピン人移住者の関係に焦点を当てた。「研究計画・方法」の最終年度に示したように国内海外の対面での学会での報告は実施できなかったものの、前年度とはちがい、オンラインを活用した国立民族学博物館での国際会議Special Research Project, Performing Arts and Conviviality等において報告を実施することができた。また、所属大学地域での2つの研究会において報告を実現できた。さらに、2つの分担執筆書籍において調査地の状況を公表した。これらの文章では複数エスニシティ・ナショナリティ関係構築分析を意識した研究成果となっただろう。また、令和3年度は感染症拡大が小康状態だった時期をみて、2回ほど現地調査が実現できた。調査では、計画段階には想定していなかった地域の高齢者たちの憩いの場として作られたカフェHにフィリピン人を含む多く地域の人びとが集まり、交流拠点となっていることが明らかになりつつある。新型コロナウィルスCOVID-19の感染拡大後もこのような活動は、対面とオンラインを駆使したつながりづくりの工夫により進化した関係が形成されてつつある。カフェHでは、サロンで活動するフィリピン人グループのメンバーの一部だけではなく、現在では近隣に在住するインドネシア人も従業員となっている。インターネット発信のラジオ番組で「近隣のフィリピン人」を含むさまざまな立場の人が登場している。この様な状況は一部の地域を拠点とする大手メディアに注目されつつあるが、その詳細は学術研究で細かく理解し、日本人・在日コリアン・フィリピン人の「複数エスニシティ・ナショナリティ関係構築」の重要な視点を提供する意義があるだろう
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要にあるように、当該地域に集住している在日コリアン、日本人、フィリピン人移住者が「複数エスニシティ・ナショナリティ関係」を構築する過程と場は、サロン、東九条マダン、東九条劇場、さらに、カフェHが開店するなど、想定以上に増加し、今後も変化する様相をみせている。特に、非営利活動であるカフェHは長年地域の社会活動に携わってきた在日コリアン、日本人住民が中心となりつつ、地域の高齢者だけではなく、国籍、世代を越えて交流できるスペースとに変貌しつつある。また、本研究が注目してきたサロン、東九条マダン、フィリピン人グループメンバーに加え、インドネシア人スタッフなどこれまでこれらの活動に加わっていない近隣住民も集まるなど、地域の新しい側面をみせている。
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今後の研究の推進方策 |
既に昨年度のこの項目でも述べているように、申請書作成時には想定されてなかった状況が急速に進展している。これらの動きは研究目的に大きく関連することであることを考えつつ、追加の令和4年度は追加的に状況を考察し、分析するとともに研究報告も実施する予定である。調査自身も他の関連研究資金も活用しながら、情報提供者へ聞き取り調査や、可能な限りのフィールド調査を実施する。フィールド調査は感染拡大により京都市で実施できない場合でも、オンラインを活用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度予定していた海外での研究成果報告のための学会参加は新型コロナウィルスCOVID-19の感染拡大により、実施することが限定され、渡航費は執行されなかった。次年度も引き続き、国内海外学会の多くは、オンライン開催が予想される。令和4年度は東九条地域における複数エスニシティ・ナショナリティ社会関係が構築される動向への追跡を実現するためのフィールド調査やオンラインでの報告のための学会・研究会開催などのために活用する予定である。
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