【研究期間全体】本研究では、日独における自然保護法制の発展を、両国においてその起点になった天然記念物法制にさかのぼって比較検討することを目指した。それにより、それぞれの法制度の特徴を歴史的由来から分析して明らかにすることが目的であった。 しかし、Covid-19のパンデミックにより、ドイツでの資料収集を思うように進めることができなかった(まさに状況が深刻化した2020年3月に資料収集旅行を計画していたが、勿論キャンセルせざるを得なかった)。したがって、ドイツ自然保護の起源となる天然記念物法制(プロイセン天然記念物保全局の設立から帝国自然保護局への改組)の歴史、郷土保護運動についての歴史は、草稿をそれなりに書き溜めたものの、詳細を一次史料によって詰める作業は断念せざるを得なかった。また2022年度に所属機関がかわったため、諸状況への適応のため多くの時間を費やすこととなり、研究が思うように進まなかった。 しかし、日本についての研究はそれなりに進んだ。2本の論文「日本における天然記念物制度と自然保護(1906-1944)I・II」は、その直接の成果である(またこれらには本研究で目指した日独比較のアウトラインを記しており、これも重要な成果である)。さらに日本についてのこれまでの研究をまとめ・深化させ・英語で諸外国の読者に紹介する論文も執筆した。これについては以下に記す。 【最終年度に実施した研究】上述のコロナの状況、さらに英文の『日本環境史ハンドブック』の執筆依頼を受けたこともあり、研究課題のうち日本に関わる論点を英文でまとめることとした。この報告書の執筆時点で、すでに公表されている。日本についての研究を諸外国の読者に問うことができたのは、大きな成果であったと考えている。
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