研究実績の概要 |
本研究は①日本のホームレス及び生活困窮者の居住実態を社会調査によって明らかにし、②それに基づいて効果的な居住改善施策を検討することを目的としている。 本年度はホームレスの面接調査・インターネット調査を実施する予定であったが、両調査に応じてくれる対象者が見つけられず、残念ながら実施には至らなかった。 ただし、申請者は本年度までに一定の研究成果を上げている。すなわち、国際学会で2回報告を行い("The resistance of the homeless against governmental power: a preliminary study in Japan and the United States"、RCSL, 2018年5月17日ほか)、国内学会でも1回報告を行った(「ホームレス排除と市民社会」日本法社会学会、2018年5月26日)。 また、ホームレスに関連する論文を2本公表した(長谷川貴陽史「ホームレス排除の諸形態」法社会学85号90-106頁(2019年3月)、同「身分証明・自己排除・支援―元ホームレスへのインタビューを素材として―」法と社会研究4号89-113頁(2019年5月))。これらの中でホームレスの居住実態や社会的排除については、ある程度明らかにできたと考える。また、2021年度には共著教科書『スタンダード法社会学』(佐藤岩夫・阿部昌樹編著、北大路書房、2022年3月)の1章として、長谷川貴陽史「包摂と排除」(同書242-250頁)を公表した。 さらに、本年度は「儀礼・論証・基底-法社会学における法の概念と考察対象に関する試論的考察」(法と社会研究8号、信山社、近刊、校了)を執筆した。同論考は社会システム理論が社会的排除について適切に記述できない理由を同理論の枠組の欠陥から説明したもので、ホームレス研究から法社会学理論の再検討へと進むことができた。
|