研究課題/領域番号 |
17K03322
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
松本 英実 青山学院大学, 法学部, 教授 (50303102)
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研究分担者 |
葛西 康徳 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80114437)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミクスト・リーガル・システム / 混合法 / 慣習法 / mixed legal system / スコットランド / 南アフリカ / モンテネグロ / ウブントゥ |
研究実績の概要 |
本研究は、ミクスト・リーガル・システム(混合法)論の方法論を用いて、我国の従来の慣習法論を批判的に検討し、これを通じて日本法の比較法的再定位を行うことを目的とする。本研究では、西洋法以外の要素として指摘される「慣習法」の批判的総合的再検討を通じて、日本法自体の比較法的位置づけを、内外の研究者・実務家に提示し、グローバル化におけるミクスト・リーガル・システム論の新たな展開に貢献することを意図している。 本年度の研究においては、慣習法に関し日本法と比較可能な対象を探索することに力を注いだ。研究成果としては以下のものが挙げられる。 法典編纂における慣習法の扱いをめぐって、モンテネグロ法典を取り上げ、その起草過程と起草者について、日本法との接点を探った。1888年モンテネグロ一般財産法典およびその起草者ヴァルタザール・ボギシッチについての研究を牽引するゾラン・ラショヴィチ教授(モンテネグロ大学)を招聘し、研究会を開催し、討議を行った。また、ボギシッチに対する日本から見た評価について、国際学会(英国法制史学会)において発表を行い、英国、米国、フランスの研究者と意見交換を行った。 スコットランド法との比較について、ジョン・ケアンズ教授(エディンバラ大学)と共同研究についての打ち合わせを行い、裁判外の紛争処理に着目してそこに一種の慣習法を見出すという研究の可能性について論じた。18、19世紀スコットランドの奴隷制に対してこのようなアプローチを試みることとし、来年度の国際研究会の実施に向け、具体的な準備を進めた。 南アフリカ法との比較について、トーマス・ベネット教授(ケープ・タウン大学)と共同研究の相談を行い、テーマとして同地特有の伝統的概念であるウブントゥUbuntuを取り上げることとした。これについても来年度実施の国際研究会の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、共同研究者と具体的な共同研究の内容について十分に意見交換を行うことができた。ミクスト・リーガル・システムの代表的研究者である、ジョン・ケアンズ教授(エディンバラ大学)とケンブリッジにて面談し、平成30年度に来日して共同研究を行うことの内諾を得た。特に研究テーマとして、奴隷制に対する法的取り扱いにおいて、いわゆる慣習法的扱いがスコットランドでは、19世紀前半までなされてきた。従来の慣習法研究には奴隷制の観点が全くなかったので、この点は注目に値する。また、南アフリカの慣習法の専門家であるトーマス・ベネット教授(ケープタウン大学)とも共同研究の打ち合わせを進め、ウブントゥ(Ubuntu)に焦点を絞った。また、広義ミクスト・リーガル・システムの観点から興味深いバルカン地域について、ゾーラン・ラショヴィチ教授(モンテネグロ大学)と研究会を開催し、モンテネグロ一般財産法典における慣習法の扱い、特に法典化に先立つ慣習法調査についての専門的知見を伺った。
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今後の研究の推進方策 |
ジョン・ケアンズ教授とトーマス・ベネット教授を招聘して、法制史学会シンポジウムをはじめとする一連の研究会を開催し、混合法地域における慣習法をテーマとし、これと日本法との比較を試みる。混合法についての抽象的な方法論的議論ではなく、具体的な素材の法制史的探究を通して方法論の妥当性を検証したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に実施した海外研究者の招聘について、滞在期間が当初の計画よりも短縮されたため、残額が生じた。次年度に実施する海外研究者招聘をより十全なものとするためにこれを用いたい。
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