研究課題/領域番号 |
17K03325
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山田 八千子 中央大学, 法務研究科, 教授 (90230490)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 立法学 / 学術法制 / 自生的秩序 / 大学 |
研究実績の概要 |
本研究は、立法の哲学としての立法学の視点から、科学技術基本計画、科学技術基本法を中心として、自然科学および人文・社会科学双方を含む意味の学術の振興のための法的・制度的仕組みである学術法制を分析・検討し、より良き学術法制スキームを提示することを目的としている。この目的を実現するために、平成30年度においては、平成29年度と同様、日本における学術法制の制度的変容・現状に関する文献ならびに収集すると共に、複数の外国における学術法制に関する制度に関する文献を収集し、これらについての分析をおこなった。 また、学術法制の具体的な状況を調査するため、イタリア、オーストラリア、シンガポールにおいて、それぞれの学術法制について、インタビューや資料収集を行った。これらの文献とインタビュー結果に基づいて、成立過程および評価の段階でどのように扱われていたかという視点の下で精査すると共に、現行の学術法制の成立経緯と問題点に照らして、比較法的な検討をおこなった。 学術法制についての立法については、国家が学術振興の資金の分配についてどのような権限を有しているか、学術団体が国家の政策提言にどのように反映しているかという、民主的基盤のある国家主導型の仕組みが中心となる一方で、大学その他学術団体という共同体の役割とその階層構造は、立法には直接影響したり組み込まれたりしないにせよ、学術法制の基盤を支えるものとして重要であるものの、比較法的に大きな相違があることが明らかになった。なお、学術団体と国家との関係では財政的要素が最も機能していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、科学技術基本法を基本枠組みとする従来の学術法制のあり方を立法学の視点から原理的に検証し、望ましい学術法制のあり方を提言することを目指すことを目的とする。この点で、日本においての学術法制の今までのあり方についての問題は相当程度検証できた一方で、現在において、たとえば政府によるSociety5.0提言など、従来の学術法制への公的な制度の取組自体の性質が変容していることをふまえて、こうした変容を取り入れる形で、課題の分析を進めつつある。 比較法的な検討においては、日本における学術法制の普遍的な性質と法文化固有の問題との区別の分析がより明確にされつつある。 したがって、学術法制をめぐる公的な制度の変容は当初の想定を超えているものの、この点をふまえて、研究課題の進捗状況はおおむね順調に進んでいると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
立法学の学術法制に関する申請者の研究の成果が、批判的検討に耐えるものであるかについて検証するため、複数の研究会で報告を予定しており、ここでの議論をふまえて、さらに立法学の枠組みを検討する予定である。 Society5.0等の政府の取組に対する検討については、たとえばAIなどの従来とは異なる社会変革の可能性のある仕組みもふまえて、分析検討を続ける予定である。 比較法的な見地から、財政基盤に及ぼす影響、財政の透明性が、学術法制の立法において重要な役割を果たしていること、ならびに学術団体の階層構造が各国により大きく異なることが検証されたので、この点について、さらに分析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた消耗品の金額に差があったため。
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