本研究は、立法の哲学としての立法学の視点から、科学技術基本計画、科学技術基本法(新申請時)を中心として、自然科学および人文・社会科学双方を含む意味の学術の振興のための法的・制度的仕組みである学術法制を分析・検討し、より良き学術法制スキームを提示することを目的としている。この目的を実現するために、令和4年度において、日本における学術法制の制度的変容・現状に関する文献ならびに収集すると共に、複数の外国における学術法制に関する制度に関する文献を収集し、これらについての分析をおこなう研究である。 本研究を進めている期間中、科学技術基本法は、科学技術イノベーション基本計画に基づき科学技術イノベーション基本法へと改正され、その改正の中で、科学技術基本法の中で、人文科学を除くとされていた規制対象が、人文科学を含むという内容の改正が行われた。この点、本研究の出発点の一つである、人文科学を除外した形での学術法制の問題点の一つが解決された一方で、総合科学技術・イノベーション会議による学術法制との関係は、緊張をはらむものになりつつある。学術法制を支える財政的基盤については、国家が学術振興の資金の分配についてどのような権限を有しているのみならず、学術団体が国家の政策提言にどのように反映しているかという、民主的基盤のある国家主導型の仕組みのあり方が問題になってきている現状、日本学術会議のような学術アカデミーの位置づけ、大学その他学術団体という共同体の役割とその階層構造が比較法的に大きな相違があることが確認され、より良い学術法制に向けての立法の役割が増していることが確認できた。
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