平成31年度(令和1年度)は、「戦後体制」の形成過程の検討についての枠組を概括するために、1)平成30年度に引き続き、「戦後体制」の形成の要素となる占領終結前後の法的・政治的事象の構造的把握を行うことを試み、国立国会図書館や各大学図書館などにおいて収集した史資料、同時代の書籍・論文などを踏まえて検討を行い、更に、問題意識の深化を行うためにドイツの研究者との共同研究を行うと共に、2)これらをいくつかの文脈に従ってアウトプットし、「戦後体制」の構成要素についての実証を行った。 具体的には、1)に関しては、9月1日から9日にかけて、アメリカ国立公文書館を訪問して資料調査を行い、占領管理体制の下での法と法学のあり方を示すものを中心とする史料をデジタルカメラを用いて撮影・収集した他、11月19日から24日にかけて、マックス・プランクヨーロッパ法史研究所及びルーヴェン大学を訪問して、戦時・戦後初期の日独法学の比較についてのワークショップを行なった。 2)に関しては、5月12日に行われた法社会学会企画シンポジウムに登壇して、戦後の司法制度改革の「歴史化」を試みる報告を行い(5月12日)、後に活字化した他、昨年度に立ち上げた「憲法の規整力」研究会において、戦後初期の憲法学における「抵抗」の重層性について報告を行い(12月1日)、後に活字化した。また、昨年度行った報告を元に戦後の沖縄の法的地位についての研究を活字化し、更に、現行刑事訴訟法の制定に深く関わった團藤重光の旧蔵史料を用いて、1950年代の同法改正作業についての実証研究も活字化した。なお、本研究の成果を組み込んだ書籍『〈戦後憲法学〉の群像』(共編著)及び『戦争と占領の法文化』は、令和2年度内に刊行予定である。
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