研究課題/領域番号 |
17K03331
|
研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
野崎 亜紀子 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (50382370)
|
研究分担者 |
橋本 努 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (40281779)
嶋津 格 獨協大学, 法学部, 特任教授 (60170932)
川瀬 貴之 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (90612193)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 自由と協働 / 集団的意思決定 / 正義 / 自律的個人 / リベラリズム |
研究実績の概要 |
2017年度、2018年度を通じて、研究代表者及び分担研究者全員が出席して4回の研究会を開催した他、研究代表者(野崎)は、本研究テーマの一環としての個人と公権力とはことなる共同体であるところの専門家集団を背景とする研究者の自律的意思決定が内包する集団的背景の意義と機能(リベラリズム法学を補完する役割)をめぐって、日本法哲学会2017年度年次大会統一テーマ「生命医学研究と法」シンポジウムで検討を行った(『法哲学年報2017』)。さらに本研究に参与する全研究者は、本研究の基盤となる発想としての「自由と協働」をテーマとして論文を執筆し、本研究の基本的考え方を提示した(『法の理論37』近刊)。また、川瀬と野崎は、国際学会においてもそれぞれ、自律的個人としての活動と規律を支える集団的背景をテーマに含む報告を行った(The 1st IVR Japan International Conference 2018)。 このほか、本研究は国内外における発信および検討を行うことを研究計画内に予定していたが、2019年に開催されるIVR(法哲学社会哲学国際学会連合)世界大会でのSpecial Workshopを本研究の分担研究者以外のメンバーとともに企画し採択された(Collective Decision Making in a Theory of Justice, Convener, Prof. NOZAKI, Akiko)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度、2018年度は全体の研究計画上基盤作りを行う期間として、情報の収集分析を各研究者が実施し、適宜意見交換を行う最中にある。全研究者が集まっての研究会の回数は2018年度は1回の開催に止まったが、分担研究者外の研究者にも参与頂き、意見交換をすることが出来た。 現時点で取りまとめの実績を提示するには十分ではないが、本研究の基盤を為す発想としての「自由と協働」をテーマとする論文を、全分担研究者が執筆した(近刊)。これらの論文に対しては本研究分担者外の法哲学、法社会学の研究者からの書評が得られ、近く公刊される予定である。この間の各自の研究進捗状況は、上記「研究実績の概要」これにともなう研究実績内に具体的に示す通りである。 各研究者の所在が各々に遠方であることから、研究回開催場所、開催時間、費用との負担が大きく研究計画上予定されていた研究会開催については必ずしも順調とはいえないものの、各自の研究進捗状況は概ね予定通りである。他方、研究計画上確定にまでは至っていなかったこととして、本研究に対して国外からの助言・意見交換を予定していたドイツTechnische Universitat Munchen所属のProf. Dr. Christoph Leutgeのもとへ研究代表者(野崎)は短期滞在をし、意見交換を行う事が出来た。このことは次年度以降予定している国内外における本研究の発信および検討に向け重要な活動となった。また分担研究者(川瀬)も同Prof. Dr. Christoph Leutgeが参与するミュンヘンにおける国際会議に参加・報告を行った。分担研究者(橋本)は、本研究参加の研究者以外の研究者とともに、本研究に資する経済思想状の理論枠組の構築に向け、国際学会での報告等を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、これまでの個々の研究者等による研究の蓄積・進捗に基づき、対外的にこれを公表・公開し検討を進めることを基本方針とする。具体的には、『法の理論37』に特集として掲載された本研究の全研究者によって執筆された特集タイトルの各論文に対する書評論文への応答を行う(『法の理論38』に執筆・掲載予定)。2019年7月にルツェルン(スイス)で開催される「法哲学・社会哲学国際学会連合(IVR)」世界大会に採択されたSpecial Workshop(テーマ:Collective Decision Making in a Theory of Justice)では本研究に参与する全研究者及び、山田八千子教授(中央大学)にも参加頂き、議論・検討を行う。また、分担研究者である川瀬、嶋津らを含む法哲学研究者等は、2019年日本法哲学会学術大会においてワークショップ「ジョエル・ファインバーグの法哲学を描き出す-自由と権利の観点から」(開催責任者:川瀬貴之)を開催し、ここでも本研究の自由と権利という概念に内包される集団的概念の位置づけを含む問題の検討が為されることが予想される。この他に、全担当研究者による研究会の開催を2回程度実施する予定である。 国内外における議論および論文上における議論、検討を踏まえ、最終年度には、本研究全体の成果公開として論文集の編纂に向け準備を進める。このことにより、本研究の目的、すなわち「わたし」の自己決定と「わたしたち」の自己統治の関係については、法理論的整理と解明がこれまで不十分であり本研究に於いては既存の法哲学周辺領域の先行研究を踏まえて正義論の一環としての理論問題と位置づけ、現代の難題である具体的な集合的意思決定問題の解決に向けた議論の前提となる理論の提供を行いたい、とするこの目的の達成に向け本研究を推進し、もってひろく学界における議論の対象としたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究会の開催が予定よりも少なくなったことが主な要因だが、これは次年度国際学会への出席等の打合せにより次年度開催が増加することが見込まれたためである。研究者等が東京・関西・北海道と遠方に別れているため、使用会場に必ずしも大学を利用することが合理的でない場合もあり、その際会場費等がかかることが考えられるため、そのために用いることを計画している。
|