研究課題/領域番号 |
17K03335
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
高村 学人 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80302785)
|
研究分担者 |
西出 崇 京都外国語大学, 外国語学部, 講師 (30513171)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | アンチ・コモンズ / 土地台帳 / 入会権 / 慣行 |
研究実績の概要 |
2018年度は、交付申請書の研究実施計画に沿う形で京都府南丹市美山町での入会集団への調査を平屋地区の各集落で実施した。本研究では、昭和49年に実施された全国入会慣行調査のデータをそれに先立つ入会慣行調査と農林業センサスでの集落調査と連結することを目指しているが、平屋地区の九集落にて調査票を用いた調査分析、公図によって入会地の場所を把握する地理分析、土地台帳に記録されている所有の変遷分析の3つを行ったことで、どのような方法論にて調査分析していくか、ということに見通しを得ることができた。特に土地台帳と公図の閲覧が、市町村役場にて行えることが確認できたこと、京都府全般の土地台帳・旧公図の資料の保存状況を京都府土地家屋調査士会の先立つ調査に依拠することで把握することができたことは、研究を大きく前進させた。 研究成果の発表に関しては、フランス語での論文がフランスの土地利用研究を代表する学術誌に掲載されたり、9月に台湾で行われた土地利用に関わる国際会議で本研究の理論的枠組みを2000年農林業センサスの集計とともに示すことができた他、土地総合研究での論文公表を通じてアメリカのアンチ・コモンズの悲劇論を日本で応用する場合のフレームとして多数共有者型アンチ・コモンズと零細分散錯圃型アンチ・コモンズという概念を示すことができた。台湾の国際会議参加を通じて韓国と台湾の研究者との交流も深めることができたので、これは、次年度以降の研究成果の発信に活かして行くことができる。 資料分析に関しては、大正5年の全国入会慣行調査に収録されている入会集団の規約のテキスト注力も進めることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
京都府美山町にて調査を進めることができたので、方法論につき一定の見通しを得ることができた。他方で入会集団が所有する入会地がかなりの筆数になること、登記名義や権利の変遷も筆毎によって異なることもわかったため、データ分析のケースの設定が簡単にいかないこと、集落のみが入会集団ではなく、集落連合や集落内の組による所有も多いため、農林業センサスの集落カードとの連結を行うとすれば、こういった多様な入会の姿を捨象せざるを得ないこともわかった。わからないことがわかったという点で前進であったが、予定していた分析モデルが妥当しないこともわかったため、予想以上に計画が進んだとは言えない。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き美山町での調査を進めながら、GISデータの活用、他の調査とのデータ結合といった分析的作業を進めていく。理論的な枠組みについては、論文執筆を通じて整理が進んだので、次年度は、英語での発信も強化していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
京都府土地家屋調査士会から土地台帳・旧公図の資料保存状況のデータベースについて閲覧許可を頂けたのでこの調査を行う費用がかからずに済んだ。調査旅費に関しては、ゼミの調査も兼ねていたため大学の旅費を用いることができたため、執行がなかった。次年度は、リマで行われる国際コモンズ学会にて研究発表を行うため、旅費が多くかかる。データ連結作業もアルバイト雇用等を行いながら進める予定であり、繰り越しとなった予算を多く用いる計画が次年度にある。
|