S49全国入会慣行調査、S10全国入会慣行調査のデータ入力を行い、S49年データについては、分析を進めることができた。あわせて2000年農林業センサス・慣行共有事業体の個票データも農林水産省統計部センサス統計室からデータ提供を得ることができ、S49年データと比較しながら、アンチ・コモンズの状態がどの所有名義に多くみられるか、この状態が過少利用を引き起こしているか、どうかの統計分析を進めることができた。 このような量的データ分析と並行して、京都府美山町にて3ヶ年にわたり、入会慣行に由来する共有林を持つ集落に調査を行うことができた。災害復旧の対応をどうしているか、移住者の入会林への権利をどのような条件で認めているか、私有林の寄付の相談が集落にあるか、など、現代的な課題を調査票調査に盛り込むことができ、移住者が増加すると入会のルールも変化するが、所有名義の影響もうけ、完全に開放的にはなりにくいということも仮説として得ることができた。 入会共有林にのみこの研究課題では注目していたが、実際の災害復旧や林業は、私有林も含む形となり、入会共有林と私有林との連携が必要であることもわかった。林道管理組合という組織が災害復旧でも林道の管理・整備でも重要な役割を果たしていることが調査からわかったが、これについては、先行研究がない。今後の研究では、これまでの調査資料、個票データを活かす形で、この未研究のポイントを明らかにする方法を展開していきたい。
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