最終計画年にあたる2020年度においては、本研究が考察の対象とする「立法のアウトソーシング現象、すなわち、法律若しくは条例又は法律の委任に基づいて制定される政省令等の法規命令において、その実質的規律内容が、立法権限を持つ国会若しくは地方議会又は行政庁によってではなく、規律内容に密接な利害関係性を持つ私的法主体(民間団体等)によって自律的・自治的に形成され(民間レジーム)、それが法律若しくは条例又は法規命令に援用(参照指示)されることにより法規範の中に取り込まれていく諸々の現象」のうち、特に都市法領域においてみられる立法のアウトソーシング現象に焦点を当て、その法構造並びに実際の運用状況を確認するとともに、そこに潜む法的問題につき、公法学(とりわけ行政法学)的分析軸に依拠しながら、これを分析する作業を行った。 近年、町内会や街区などといった、基礎的自治体よりも狭い生活空間又は都市空間において、良好な都市環境又は住環境を維持、管理または増進すること目的として、当該狭域に土地所有権等を持つ地権者、当該地域に居住し若しくはそこで事業を営んでいる地域住民又は当該住民の支持を得て創設された街づくり協議会等の団体等が主体となって「当該地域に妥当する地域固有のローカルルール」が策定され、地方公共団体の長が一定の審査を経てこれを認定することにより、当該ローカルルールに「一定の(法的)効果ないし意義」を付与するやり方が、「都市空間を制御する有効な手法」として、関心を集めている。今年度は、これまでの研究で得られた知見を基盤に、「当事者自治的に形成されたローカルルールが、いかなる要件の充足のもと、行政法秩序または行政法システムと接続されてよいのか」という各論的問題を検討した。今年度の研究によって得られた知見は研究会等において報告を行っており、今後、論文として公表すべく準備を行っている。
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