研究課題/領域番号 |
17K03341
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 裕一 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (60376390)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本憲法学説史 / 国体論 |
研究実績の概要 |
今年度も引き続き資料収集とその分析を進めてきたが、それに加えて、本研究の主題に関連する研究成果を執筆し、その内のいくつかを公表することができた。これらの研究成果は、その内容に従って、大きく3つに分類することができる。 まず一つ目は本研究の直接的な主題である戦前の憲法思想に関するものであり、今年度中に公表されたものとしては、西村裕一「日本における主権論――戦前からの視角」がある。この論文は、「立憲学派」に属する美濃部の主権論を検討することを通じて、戦前日本における立憲主義と帝国主義との親和性を論じたものであるが、このようにして戦前の憲法思想の一端を明らかにすることは、「正統学派」を対象とする本研究にとっても意義を有するものであった。 次いで二つ目は、戦後の憲法学説史を主題とするものであり、今年度中に公表されたものとしては、西村裕一「北からの平和――北海道と9条」がある。この論文は、長く北大法学部で教鞭を執っていた深瀬忠一の憲法学をスケッチしたものであるが、戦前への痛切な反省を根底に据える深瀬憲法学を顧みることは、「日本」における憲法学説史を対象としている本研究に有益な示唆を与えてくれる経験であった。 最後の三つ目としては一連の天皇制研究であり、今年度中に公表されたものとしては、西村裕一「江藤淳の憲法論と天皇論」および西村裕一「象徴天皇制と政教分離」がある。いずれも、戦前の憲法学説史を対象とする本研究にとって副産物的な成果であることは否定できないものの、「正統学派」の中核にある国体概念を考えるために天皇制研究が必須であることもたしかである。その意味において、これらの成果が本研究にとって有する意義は小さくないと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終年度である今年度は本研究全体の総括を行う予定であったが、「9.次年度使用額が生じた理由と使用計画」で述べる理由により事業期間を延長することとなったため、当初の計画からは遅れていると言わざるを得ない。とはいえ、「10.研究発表」に列挙するように研究成果の公表は順調に進んでいることから、2020年度の早い段階で本研究全体の総括を行うことができる見込みである。そのため、当初の研究目的は「やや遅れている」に留まると評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
予定より遅れている資料収集を行うとともに、その分析を早急に進めることによって、本研究を総括する論文を執筆し、今年度中には『北大法学論集』等の媒体に公表したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の中心的な内容は穂積八束や上杉慎吉といった「正統学派」のテクスト分析であるが、パンフレットや新聞に掲載されている論説なども含めると、彼らのテクストの所蔵先は全国各地に散らばっている。そのため、テクスト収集に手間取り、肝心のテクスト分析についても予想外の時間を要することとなった。そこで、2020年度の早い時期に上記に係る資料収集および意見交換を行い、最終的な成果を取りまとめることとしたいと考えている。 したがって、残額は主として資料収集や意見交換のための出張費に使用する。
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備考 |
西村裕一「象徴天皇制と政教分離」『中外日報』2019年11月6日、7~7頁
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