本研究は、近年フランスにおいて制定されたブルカ禁止法を分析し、権利制限の正当化論理が抽象化しているとの議論を検討した。従来、公共の安全、静穏、公衆衛生という具体的な要素が脅かされた場合にのみ、権利自由に対する制限が認められてきた。しかし、ブルカ禁止法はこのような論理を採らず、人々の「共生」のためには、「顔を見せる」という社会生活上のルールを守らなければならないという理由付けがなされた。本研究は、この新しい考え方がフランスやヨーロッパにおいてどのように承認され、同時に従来の論理がどのように確認され続けているのかを明らかにした。近年の新しい動向に関する分析として、日本にとっても示唆的ではないか。
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