研究課題/領域番号 |
17K03347
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斎藤 誠 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00186959)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国際基準 / 国際行政法 / 国際エネルギー法 |
研究実績の概要 |
今期は、(1)「国際的な基準」の判例における位置づけにつき、行政諸分野における差異も大きいことが、前期までの作業で確認できたので、分析の手法を進化させるべく、いわゆる国際的行政法論における各論の理論につき、J.メンツェルの著作を手がかりに考察を進めた。国際的行政法につき、それを、公法における水平的な抵触法及び境界法であるとして、国家起源の外国法秩序と高権との関係での自国公法と自国公権力の境界問題を取り扱うものとし、国際法とは別のものとして定義して出発する、メンツェルの境界法としての国際的行政法論は、国際的な基準の国内裁判所における取り扱いにあたっても、示唆に富むものであった。例えば、各論としての、国際経済行政法についても、他の各論と対比して、テーマと問題状況の複雑さ(ドイツ企業の在外活動、外国企業の国内活動、外国経済規制の国内効力、外国における収用等)、国内公法が、他と入り組んでいること(国際規律レジーム、国内刑法、民事法との関係)、等々から、行政境界法に関する体系的考察がドイツにおいてもなお、欠如しており、カルテル法、営業法といった、よりミクロな分野での取り組みに着眼すべきとする点は、本研究の進展にとり大きな手助けとなった。国際民間航空条約関係についても、こうした観点からの分析を行った。 (2)分野ごとの「国際的な基準」考察の新たな領域として、国際エネルギー法にアプローチするために、再生エネルギーに的を絞って、国内における議論動向を整理した上で、1.自治体の再エネ促進に関する判例を分析し、2.日本における再エネの規制と促進の動向の特質につき考察を深めた。1.2.については、その成果の一端を公表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「国際的な基準」の判例における位置づけの分析を進めるために、行政諸分野における差異を反映し、なおかつ一般論へと環流させるべく、前期までの作業を踏まえて、いわゆる国際的行政法論における各論の理論につき、考察を進めることができた。 具体的には、国際経済行政法についてのドイツにおける議論の状況、すなわち、当該テーマと問題状況の複雑さ等々から、体系的考察がなお発展途上であり、カルテル法、営業法といった、よりミクロな分野での取り組みに着眼すべき点があること、も参考に、分野ごとの「国際的な基準」考察の新たな可能性のある領域として、国際エネルギー法にアプローチするために、再生エネルギーに的を絞って、国内における議論動向を整理した上で、1.自治体の再エネ促進に関する判例を分析し、2.日本における再エネの規制と促進の動向の特質につき考察を深め、1.2.については、その成果の一端を公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)国際経済法(特にエネルギー法分野)及び国際環境法での、国際的な基準を取り扱った外国国内裁判所判例、仲裁例につき、ドイツ、イギリス、アメリカを対象に収集、分析を継続する。 (2)国際的行政法論の欧米における議論動向を把握・分析する。 (3)上記(1)(2)をふまえ、日本の国内裁判においても利用可能な、国際的な基準の取り扱いに関する理論モデル案を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今期の研究において、国際的行政法における各論の位置づけの明確化という、新たな研究の視点を得たため、国際的な基準の分析についても、この視点による試行的考察を、エネルギー法を中心として進めた結果、国際経済法及び国際環境法分野での文献収集ヒアリング実施等につき、次年度に先送りすることを余儀なくされた。 しかし、この部分については、当該分野での文献収集の継続と理論モデル提示等を対象とした翌年度請求分と併せて使用し、研究を進展させることは十分に可能である。
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