研究課題/領域番号 |
17K03348
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 知更 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30292816)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 憲法 / 憲法理論 / 比較憲法 |
研究実績の概要 |
2020年度はコロナウイルス感染症の影響で、予定していた海外出張や国内学会での報告が中止になるなど、様々な点で当初の研究計画の修正を余儀なくされた。そうした中、以下の点で研究を順調に進展させることができたと考えている。第一に、本研究が関心を向ける法と政治の関係、憲法の様々な機能態様といった主題を考える上で重要な意味を持つ古典的文献の検討にまとまった時間を費やして集中して取り組むことができた。とりわけ、数年前から続けているケルゼン再読の作業を継続するとともに、長年の課題であったルーマン法理論の理解をこの機会に深めることができた点は重要な意味を持った。また、研究代表者が東京大学法学部で担当している「国法学」講義の構想を練り直す中で、憲法史的視座からの整理を試みることができた点も有益であった。第二に、研究成果の公表を順調に進めることができた。とりわけ、年度末にかけて執筆した2本の論文「憲法・国制・土壌」と「規範・理論・理想」において、ここまでに獲得した見取り図をある程度の抽象度で示すことができた。昨年度に公表した論文「書き割りの背後へ―日本憲法学と「法の自律性」に関する試論」で試論的に示した視角を更に一歩進めることができたと評価している。第三に、昨年度までの研究を継続する形でそれ以外の研究成果の公表も進めることができた。2019年度に公表した憲法上の非常事態に関する論考の続編として、短編ながら「憲法・非常事態・コロナ」を執筆した。また、2019年春にドイツでの学術集会で行った研究報告が無事に公刊され、2019年秋にフランスで行った報告に加筆修正を加えて原稿を編者に提出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は本来は本研究の最終年度のはずであったが、コロナウイルス感染症の影響によって予定していた海外出張ができず、また大学の研究室・図書室の利用が制限されるなど研究の遂行に様々な障害が生じたため、当初の研究目的をより良く達成するという見地から研究期間を1年延長することにした。また、このため2021年度に研究資金を残すために資金を節約的に使用することになった。とは言え、それ以外の点では、内容的に見て概ね順調に研究が進展したものと評価している。とりわけ、まとまった時間が必要なドイツ語圏の基礎的文献の検討に集中して取り組むことができ、様々な示唆が得られたこと、現時点での見通しを示すいくつかの論考を執筆することができたことが、研究課題との関係で重要であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルス感染症の影響により研究期間を延長することにはなったが、研究の内容それ自体は概ね順調に進捗しているため、2021年度も当初の計画に従って予定通り研究をすすめる方針である。とりわけ秋に学会報告で本研究のテーマとも大きく重なる主題(議会政・議院内閣制のあり方など)について報告することを求められているなど、既に年度内に複数の原稿を計画しており、この中でこれまでの本研究の成果をできるだけ公にしたいと考えている。また、年度末までに欧州への海外出張を行って当地の研究者との意見交換を行いたいと考えているが、感染症の状況がそれまでに改善しない場合には、国内研究者との意見交換を以て可能な限り代替させるなど、柔軟に対処する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、予定されていた海外出張が中止されるなど当初の研究計画に大幅な支障が生じ、このため研究期間を1年延長すると共に、次年度に十分な研究資金を残すため至近の節約的使用に努めた。この次年度使用額については、本研究に必要な書籍の収集等の作業を進めるとともに、年度末までの海外出張も予定に含めているが、感染症が沈静化しないなどの場合には他の目的に振り替えるなど柔軟に対応する予定である。
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