研究課題/領域番号 |
17K03353
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小西 敦 京都大学, 公共政策大学院, 専門職大学院特別教授 (10431884)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 市 / 地方自治法 / 要件 / 人口 |
研究実績の概要 |
本年度は、市の要件の基礎資料を整理し、最新の市制施行団体である富谷市(平成28年10月10日に町から市になった市)の現地調査を、平成29年10月に行った。 基礎資料の整理に関しては、総務省「全国市町村要覧平成28年版」掲載の791市について、市となった年月日、その際の適用法令、人口要件、市制施行直前・直後の当該団体の人口数を一覧表にまとめた。今後、このデータを分析し、市の要件が実際にどのように機能しているかを把握する。各都道府県の都市要件条例についても、一覧表に整理した。 次に、富谷市の現地調査においては、市となる経緯、市制施行前にどのような準備を行なったか、市になってどのような事務が増えたか、市民の反応はどうであったかなどについて、聴き取り調査を行った。その際、同市が関係機関へ提出した書類の一部を頂戴した。この調査結果から把握できた主な点は、次のとおりである。(1)富谷市は、明治の町村制施行以来合併せず、仙台市の発展とともに人口が増加し人口5万を超えたこと、(2)愛知県長久手市とは同市が町の時代から交流があり、同市の取組を大いに参考にしたこと、(3)市になって増えた事務は福祉事務所の事務等であること、(4)市になったときに臨時的に要した経費の大半は電算経費であること、(5)住所表示では字を削除するかどうかがポイントであること、(6)住民説明時には、市制施行のメリット・メリットに関する質問があり、それに答えることが必要であること、(7)住民意向調査は、法律や条例の要件ではないが、市制施行を目指す団体はどこもやっているようであること、(8)市制施行に際して、総務省から現地調査等はなかったこと、(9)福岡県那珂川町は平成30年度市制施行の意向を持ち、富谷市にも調査に来たことなどである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
791全市について、市となった年月日、市制施行時の適用法令、人口要件、市制施行直前・直後の当該団体の人口数を把握することができた。また、市の要件の一部を決める各都道府県の都市要件条例についても、一覧表に整理することができた。これらにより、本研究の基礎資料を整えることができた。 最新の市制施行団体である富谷市について、現地調査を行うことができ、関係機関への提出書類の一部を入手できるなど、具体的な市制施行状況も把握することができた。 このように、研究初年度に予定していた網羅的なデータ把握、個別事例の調査を行うことができたので、「おおむね順調に進展している」と自己点検による評価を下した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、研究初年度に計画していた事項を行うことができたので、今後も、研究計画に沿って推進していく。 平成30年度は、資料やデータの整理等に院生等の作業協力を得て、次の点を明らかにする。まず、市の要件の基礎資料の分析を行い、実際に機能してきた市の要件を明らかにする。次に、市の効果、すなわち、町村と比較した場合、実定法上の扱いはどのように異なるのかを、文献調査及び現地調査により明らかにする。現地調査は、富谷市の調査を平成29年度に実施できたので、最近、町村から市になった他の団体を訪問し、町村から市になったことで法令上どのような事務・権限・組織が増加したかなどについて、具体的な把握を行う。次に、市の設置に関する国の関与について、地方自治法上の制度やその運用の変化状況を把握して、分権改革の中で、地方自治法上の総務大臣の関与が変化している状況を明らかにする。また、都市要件条例の規定として特徴的な規定を持つ和歌山県に関して、同規定の制定経緯等について現地調査等により深堀り調査を行う。以上の調査結果を踏まえて、市の効果を考慮したあるべき市の要件等の検討を行う。 平成31年度は、補充調査やデータの確認等を行ったうえで、地方自治法上の市の要件の見直し案を含む研究全体のまとめを作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査及び資料収集のための大学図書館等の訪問旅費については、所属機関の旅費を充当し、実行することができたので、訪問予定個所を増し、そこに科研費を充当する予定としたが、その執行が次年度となり、科研費の次年度使用が生じた。人件費・謝金については、データの整理までで今年度の作業が終了したので、分析部分が次年度使用となった。 使用計画としては、旅費については、現地調査及び資料収集のための大学図書館等の訪問に使用し、人件費・謝金については、データ分析等に使用する予定である。
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