本研究は、市の要件と効果を検討することによって、我が国の地方自治制度における市と町村の区分の意義等を明らかにしようとしたものであった。 最終年度においては、当初計画では、人口が少ない市や人口や権限が多い町村を訪問して、その実態等を調査する予定であったが、COVID-19 のためにこうした訪問調査はできなかった。その代替として、地方創生の総合戦略に関する内閣官房保有資料を情報公開請求によって入手したり、自治体職員等に聞き取り調査等を行ったりすることで、実態把握に努めた。その結果、権限の裏付けとなる財源は地方交付税制度があることによって、相当程度財政措置されていること、ただし、地方交付税不交付団体においては、こうした財政措置が効かず、権限を持つか否かに関して慎重な検討がなされていること、などが分かった。以上の研究成果は、小西敦(2021)「地方版総合戦略に対する地方議会の『関与』」『地方自治』886号等の論文として発表するほか、2021年11月の静岡県立大学大学院社会人学習講座や2022年1月の藤枝市議会における議員研修会等において活用した。 研究期間全体を通じて得た成果としては、1現行地方自治法の市の要件の一つである人口5万人以上というものは、市の要件規定の変遷や我が国が全体として人口減少にあることを勘案すると、高いハードルであること、2これに対して、市の効果である権限の拡大などは、福祉事務所の設置及びその事務のように、町村側が希望すれば、そうした権限を持つことができるものが多く、この面では、市と町村の区分は、大きくないこと、などを明らかにできた。 本研究の全体としての意義は、人口減少社会の現在の我が国において、市の要件や市と町村の区分が必要なのか、を再検討する材料を提供できたのではないか、と考える。
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