研究課題/領域番号 |
17K03355
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
黒澤 修一郎 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (30615290)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 違憲審査制 / 憲法 / アメリカ法 / 中絶 |
研究実績の概要 |
平成30年度における、本研究課題に関する研究実績の概要は、次の通りである。 平成30年度は、本研究課題に関連する論文として、黒澤修一郎「Roe判決とバックラッシュ・テーゼ(2・完)」(島大法学62巻1号55-101頁(2018年))を公表した。この論文は、2回連載論文の完結編に当たる。すでに公表済の前稿と併せて、この論文は、1960年代から1990年代前半までの、アメリカにおける中絶をめぐる法と政治の展開について考察を加えたものである。本論文は、結論として、次の諸点を指摘した。①アメリカ中絶政治の分極化は、1973年のRoe v. Wade判決以後に急速に進行したのではなく、それ以前から進行しており、そしてそれ以後も緩慢に進行していった。②中絶裁判の政治的・社会的影響について考察するに際しては、司法府以外のアクター(連邦議会,大統領,州政府,世論,社会運動団体)の行為とその背景に目を向ける必要がある。③現代アメリカにおける政治的分極化は、従来の司法審査理論が想定する民主的政治過程像に再考を迫る可能性を含んでいる。なお 本研究の研究計画では、平成30年度は、中絶裁判の歴史的研究に重点を置き、さらにその成果を中間報告として公表する、という予定であった。本論文は、この歴史的研究に関する中間報告として位置づけることができる。 他方、平成30年度までに公表した論文にあっては、アメリカ中絶裁判の歴史に関して、1990年代までしか扱うことができなかった。そのため、それ以降の時代に関しては、今後の研究課題として残された。ただし、法学のみならず、政治学などの隣接領域の研究についても調査を進める必要があったため、多少の時間がかかる点はやむをえないと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、前述の通り、本研究課題の中間報告に当たる論文の公表を行うことができた。とりわけ、アメリカ中絶裁判の歴史研究を進めることができた点、および、アメリカ中絶裁判をとりまく政治的・社会的環境の変化について理解を深めることができた点で、研究はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題として、次年度は、アメリカ中絶裁判の展開に関して、1990年代から現代までの時期を扱い、その特徴を把握することを目指したい。また、本研究課題についての考察をさらに進めるために、司法審査理論に関する研究にも力を入れたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が29,617円生じている。この金額は、次年度における文献資料の収集(図書費)として使用する予定である。
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