エクイティ・ベースの報酬に関する課税問題については、疑似ストック・オプション判決(東京地判平成29年10月30日)を取り上げ、先例としてのストック・オプション判決(最判平成17年1月25日)との対比等を行い、会社に対して助言を与える立場にある税理士や公認会計士は、絶えず法改正の動向に注意しておかねば、関係当事者から損害賠償請求を受ける危険性を指摘した。また、ストック・オプション等が給与所得となる場合、会社が源泉徴収義務を負うという現行法のあり方について改めて批判した。 会社(非上場会社)に対して支配力を有する個人株主が会社へ株式を譲渡した場合のみなし譲渡課税(配当還元方式適用の可否)について、東京地判平成30年7月19日判決を取り上げ、通達に基づく株式の評価のあり方と判決の問題点を指摘した。 株式対価M&Aについては、令和2年以降の税制改正における検討課題の1つになることが、税制改正大綱において示されているので、今後の研究の足ががりとして、現状の問題点を洗い出し、課税繰延措置を検討する際に考えておくべき項目を抜き出した。 デジタル経済への対応は、これからのコーポレート・ガバナンスと課税を考える上で、避けて通れない問題となった。この問題については、まず2019年のOECD公開討議文章を題材として、経済の電子化が課税に対してどのような影響を与えるのかを示し、G20の福岡財務大臣会合における議論から、新ルール導入に対する先進国と新興国の対立を浮き彫りにしつつ、OECD(BEPS包摂的枠組)およびG20におけるコンセンサス・ベースでの解決に至らない場合、各国は一方的措置としてのデジタルサービス税を導入する結果、企業は二重課税に直面し、条約による解決も望めない状況になることを指摘して、問題解決の必要性を説いた。
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