研究課題/領域番号 |
17K03369
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田村 達久 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (60304242)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 民営化 / 公営企業 / 再自治体化 / 再公営化 / 公企業 |
研究実績の概要 |
外国、とりわけ、ドイツ連邦共和国における企業形態による地方公共団体の公共役務の調達・提供に係る法的問題の理論的考察、研究が、主に次の2つの視角から遂行された。すなわち、ヨーロッパ連合(EU)における当該域内市場における競争法制・競争政策の視角からと、ヨーロッパ自治憲章に具体化されている地方公共団体の自治権保障の視角からである。 ドイツにおいては、1990年代から新制御モデルの考えに基づくPrivatisierungが推進されてきた。その結果、高収益性のある地方公共団体の事業領域の民営化が進み、そうではない事業が地方公共団体に残される傾向が強まった。このことは、民営化された事業領域に対する地方公共団体の民主的正統性の基づく統制可能性の問題をさらに惹起するものとなっている。くわえて、公企業と私企業の間の平等取扱いがEUの法原則として明定されている(ヨーロッパ連合運営条約〔AEUV〕106条)ため、地方公共団体の公企業に対する、例えば、補助給付などの財政的助成手法の可否・法的限界の如何が、EUの競争法制・競争政策の視角から検討されなければならない。他方、ドイツもその締約国であるヨーロッパ自治憲章では、締約国の地方公共団体がその各種制度の形態等をその地域的条件に適合させるするように独自に選択、決定することを保障している(同憲章6条1項)ことから、この地方公共団体の組織高権(日本法における自治組織権)を、いかに、また、どの程度、公共役務の調達・提供の組織形態等の決定において尊重すべきかが法的な問題となる。 その帰結として、地方公共団体の企業的活動、とりわけ公企業形態の選択可否の法的判断基準の如何、特に一般的経済的利益のある役務(AEUV14条)に関する場合のその検討、および、民営化された事業領域の再公営化、再自治体化の可否の法的判断基準の如何についての考察の深化が緊要となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
勤務先所属学部の執行部の一員、具体的には学生担当教務主任の職に2018年9月中旬より就いたこの結果、当該業務およびこれに関連する執行部業務の負担が純増したため、また、単著書出版のための作業も並行して行わざるを得なくなったため、本研究課題に係る研究遂行に当てることの時間が経常的には十分には取れない状態になったことがその理由である。
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今後の研究の推進方策 |
勤務先所属学部の執行部の一員(学生担当教務主任)としての職務が2019年度も継続すること、また、2019年度においては、国外での学術研究報告が1件、国内での学会研究報告が3件、それぞれあることをはじめ、このほかにも学術関係の報告が2件予定されていることにも鑑みて、関係文献・資料の検討に基づく研究を中心に行いつつ、国内の実態事例調査(現地ヒアリング調査)を予備的・補充的に実施することにして、本研究を推進していくことにする。 上記の国内での学会研究報告のうち2件は、本研究と関係するものであるため、当該報告の準備を行い、そして、報告に伴う質疑を受けることにより、本研究の推進・深化が図れるものと考えているので、上記の国内での学会研究報告の準備を行うこともまた本研究の推進方策の一つとなると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
勤務先所属学部の執行部の一員、具体的には学生担当教務主任の職に2018年9月中旬より就いたこの結果、当該業務およびこれに関連する執行部業務の負担が純増したため、また、単著書出版のための作業も並行して行わざるを得なくなったため、本研究課題に係る研究遂行に当てることの時間が十分には取れない状態になってしまっていたため、国内における実態調査(現地ヒアリング調査)をはじめとする実態調査(現地ヒアリング調査)を遂行できなかったことなどから、次年度使用額が生じている。
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