研究実績の概要 |
「世代間公正」という視点を主な基軸として、現代の民主政の課題を析出し、とりわけ選挙制度・議会制度のあるべき姿について憲法学的観点(規範論的観点)から考察するのが本課題である。とくに選挙制度については、「選挙年齢引き下げ」「子ども選挙権(代理投票制)」の議論についてドイツ公法学における議論から示唆を得ることに努める。 平成29年度は、ドイツの現状と理論の検討を中心に研究を進めた。本課題のとりかかりとして、最近公刊された浩瀚なモノグラフィーであるAxel Adrian,Grundsatzfragen zu Staat und Gesellschaft am Beispiel des Kinder-/Stellvertreterwahlrechts,2016の他、Isabel Rupprecht,Das Wahlrecht fuer Kinder,2011などの基本文献を精読し、さらに近時のドイツの政治状況などを踏まえながら、現状の把握・分析と論点整理を行った。また、同書を手掛かりに独語の関連文献を読みすすめた。 また、本課題の前提的な検討点として、2017年9月のドイツ連邦議会総選挙前後のドイツ公法学における民主政をめぐる諸論点につき、公法・政治学の文献を読み、問題状況の把握につとめた。後者の研究の現時点での成果を、拙稿「ドイツの民主政の現状と課題-2017年連邦議会選挙を挟んで」憲法研究2号(2018年5月)、同「軍事・諜報の議会統制」法律時報1124号(2018年5月)というかたちで公表した。とくに前者では、現行のドイツの選挙制度の課題を指摘した。さらに、憲法理論研究会2018年春季研究総会(於:中央大学)において「民主政のデザイン―政治プロセスにおける「解散権」の位置」と題する報告の機会を得た。この報告には、上述したドイツの民主政の理論と現状に関する知見が反映されている。
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