研究課題/領域番号 |
17K03373
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
田近 肇 近畿大学, 法務研究科, 教授 (20362949)
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研究分担者 |
片桐 直人 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (40452312)
上田 健介 近畿大学, 法務研究科, 教授 (60341046)
重本 達哉 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (60584042)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 墓地埋葬法 / 信教の自由 / 死者の尊厳 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、研究全体の基礎作業として、諸外国の墓地埋葬法制において「死者の尊厳」がどのように考慮されているかについて資料・情報を収集し、また、国内における墓地・葬送の実例についての情報を収集することに努めた。 具体的には、平成29年4月28日、6月11日及び7月29日に研究会を行い、調査先及び質問事項等の打合せを行ったうえで、9月10日から9月17日までにかけて、イギリス及びイタリアに赴き、現地調査を行った。すなわち、(1)イギリス・カーディフ大学を訪問して宗教法研究者から聞取り調査を行い、(2)カーディフ市営墓地及びロンドン・ハイゲート墓地を見学し、(3)イタリア・ピアチェンツァのカトリック大学を訪問して墓地埋葬法に造詣の深い研究者から聞取り調査を行い、(4)ミラノ市営ランブラーテ墓地及びマッジョーレ墓地を見学した。この調査により、イギリスの墓地埋葬法制に係る疑問点を解消するとともに、イタリアの墓地埋葬法の基本原理の1つである「死者の尊厳」の考え方について理解を深めることができた。 さらに、わが国の葬送の実情を知るため、8月19日には、わが国で最初に合葬式共同墓を設置した寺院を訪問して住職から聞取り調査を行い、そうした新たな墳墓を設置するに至った背景や墓地経営の実際について教示をいただいた。また、平成30年2月11日には神道式の墓地(神葬祭墓地)の見学も行った。 そうした現地調査によって得られた知見は、平成29年8月20日、11月12日及び平成30年2月10日に行った研究会での報告を通じて本研究への参加者間で共有するとともに、相互の批判的な検討に付した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イギリスの墓地埋葬法制について、法令・裁判例・行政実務等の収集・分析を本年度中に終える予定でいたが、わが国及びヨーロッパの大陸諸国の墓地埋葬法制との違いが予想以上に大きく、いまだ十分に解明できていない部分がある。また、ドイツ法に関する現地調査を本年度中に行う予定であったが、研究分担者の家庭の事情により、これを行うことができなかった。 しかし、その他の点に関しては、国内及び海外の現地調査を通じて、わが国の墓地及び葬法の現状及び諸外国の墓地埋葬法における「死者の尊厳」の取扱いの実情を知ることができたことから、次年度以降の研究成果公表に向けた準備はできつつある。 以上が、現在までの進捗状況について「やや遅れている」とした理由である。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツ及びイギリスを除いた諸外国の墓地埋葬法制及びそこにおける「死者の尊厳」の位置づけについては、すでに資料の収集・分析が進んでおり、今後は、これを研究成果として公表する作業を加速することが必要である。 ドイツ墓地埋葬法に関しては、平成30年度中に現地調査を実施して、必要な資料・情報の収集を行う。イギリス墓地埋葬法に関しては、本年度に引き続き、基礎資料の収集・分析・翻訳を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績報告書の「現在までの進捗状況」欄に記載したとおり、当初計画では平成29年度中にドイツにおける現地調査を行う予定だったが、研究分担者の家庭の事情によりこれを実施することができなかったため、その旅費に相当する金額が次年度使用額となっている。 この次年度使用額については、平成30年度中にドイツにおける現地調査の旅費に充てることで使用する予定である。
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