研究課題/領域番号 |
17K03374
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
上田 健介 近畿大学, 法務研究科, 教授 (60341046)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 閣議決定 / 内閣 / 統治構造 / イギリス憲法 / 憲法史 |
研究実績の概要 |
本研究は、閣議決定の対象、手続、法的効力といった性質について、比較法史的な考察を行い、ひいては、閣議決定の政治過程全体の中における位置づけについて検討を行うものである。具体的には、(1)日本法については、明治憲法下の内閣制度創設時から今日までの、主要な学説と専門文献を当たるとともに、内閣官制や内閣法の制定当時の議論を探り、また閣議決定の運用からその政治過程全体の中における位置づけについても検討を行うとともに、(2)比較法について、諸外国について閣議決定に相当する決定の対象、手続、法的性質、ひいては政治過程全体の中における位置づけ等について、訪問調査も行い明らかにしていく、というかたちで研究を進めるものである。 (1)については、国立国会図書館を訪問して、内閣制度創設に先立つ太政官内閣期、また内閣制度創設時、さらに第二次世界大戦後の内閣法制定時に関わる原史料を当たり、文献複写も行って、まだ完全ではないものの、ある程度の史料収集を進めることができた。そのうえで、少しずつであるが、史料の解読を進めている。また、最近の閣議事項についてのサーベイにも着手した。(2)については、今年度はイギリスに焦点を当てて調査を行い、3月に実地調査を行った結果、完全ではないものの多くの有益な知見が得られて相当程度進展させることができている。 なお、閣議決定にも関わる、イギリスの財政制度について、学会報告を行うとともに、論文も執筆した。これらはいずれも平成30年度に公表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本法の考察という観点からは、国立国会図書館に赴いて、太政官内閣期および内閣制度創設の前後の時期に関する史料を中心に収集を行い、また少しずつ史料の整理を進めた。また、日本国憲法下の閣議決定のありようについても、データの整理に着手した。 比較法的考察という観点からは、3月に予定通りイギリスでの実地調査を行った。そこでは、専門家からの聞き取り調査において、想定していた以上の知見を得ることができ、イギリスの閣議決定をめぐる史料の所在についても貴重な情報を得ることができたが、資料収集を行う時間が足りなかった。
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今後の研究の推進方策 |
日本法については、引き続き国立国会図書館に赴いて、史料を探索するとともに、主に太政官内閣および明治憲法下での閣議決定のあり方について、考察を進めていきたい。また、可能であれば、近時の運用について、事例研究というかたちで少しずつ進めてみたい。 比較法の今年度はドイツまたはフランスでの実地調査を予定している。語学の問題もあり、また従来の研究の蓄積が十分でないという点でも、イギリスでの調査に比較して難航することが予想される。できるだけ事前の準備を進めるとともに、場合によっては、イギリスの国立公文書館での資料収集と組み合わせることで、実地調査を効率的に行うことも考えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は、当初の見込みほど物品費(書籍代)がかからなかったせいだとみている。発生した次年度使用額は、閣議決定の実態のサーベイのためアルバイトを雇うこととし、翌年度は本格的に作業を依頼するので、翌年度分の助成金と合わせて、こちらに充当することを考えている。
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