研究課題/領域番号 |
17K03374
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
上田 健介 近畿大学, 法務研究科, 教授 (60341046)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 閣議決定 / 内閣 / 統治構造 / 憲法史 / イギリス法 / ドイツ法 / フランス法 / 立法手続 |
研究実績の概要 |
本研究は、閣議決定の対象、手続、法的効力といった性質について、比較法史的な考察を行い、ひいては、閣議決定の政治過程全体の中における位置づけについて検討を行うものである。具体的には、(1)日本法について、明治憲法下の内閣制度創設時から今日までの、主要な学説と専門文献に当たるとともに、内閣官制や内閣法の制定当時の議論を探り、また閣議決定の運用からその政治過程全体の中における位置づけについても検討を行うとともに、(2)比較法について、諸外国の閣議決定に相当する決定の対象、手続、法的性質、ひいては政治過程全体の中における位置づけについて、訪問調査も行い明らかにしていく、というかたちで研究を進めるものである。 (1)については、今年度は年度末まで新型コロナウイルスの影響で国立公文書館を訪問することができず、令和元年度から課題の複写(写真撮影)を果たせなかった。 (2)についても、令和元年度に実施する予定であったフランスの現地調査を今年度に延期したものの、新型コロナウイルスの影響で渡航が叶わず、実施に至っていない。 落ち着かない状況の中、とくに(1)に関連する日本の政治過程のあり方を中心に文献調査を若干進めたにとどまった。もっとも、閣議決定の法的性質に関連して、議院の決議との類推に気づいたこと、閣議決定の「効果」に関連して、いったん閣議決定された補正予算に対して閣議決定がやり直された例や、閣議決定された法律案が国会審議前に与野党協議で修正された例が登場し、閣議決定の政治過程全体の中における位置づけについて検討するための材料が増えたことなどの収穫もあった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度終盤に引き続き、新型コロナウイルスのまん延のため、東京(国立国会図書館、国立公文書館)での調査、そしてフランスでの訪問調査が実施できず、研究費ベースでみても未消化の部分が多く出ている。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的には、昨年度の報告書と同じである。すなわち、第一に、当初予定していたすべての分野における深掘りを諦め、メリハリを利かせながら、やや浅くなっても全体像の示すことができるように努めること。第二に、とくに政治過程全体との関連を分析することが難しいことから、この部分を縮小する一方で、現代の日本の政治の中で閣議決定のあり方が問題となる場面をいくつか想定しながら、そこでの閣議決定のあり方について憲法的な考察を行うことで、縮小する部分を補うこと。その際、可能な限りで、公法の理論からの考察も行いたい。 なお、フランスの訪問調査については、秋以降で実施の可能性を探るが、新型コロナウイルスのまん延状況によっては、諦めざるを得ないと考えている。その場合は、比較法研究におけるフランスは、文献調査により知り得た範囲に限定されるところ、事柄の性質上、文献調査で知り得ることは多くないため、最終の取りまとめとの関係でもフランスは大きく割愛することとなる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度中に行う予定であったフランスの現地調査が、新型コロナウイルスのまん延のために実施を(再)延期せざるを得なくなったこと、また国会図書館および国立公文書館における調査も同様の事情で実施できなかったために、多額の残高が生じている。フランスの現地調査については、次年度の秋以降に、東京での調査については、夏以降に、実施をしたいと考えている。ただ、とくにフランスの現地調査については実施が厳しいかもしれず、その場合には、文献の購入に充てたいと考えている。
|