本研究は、閣議決定の対象、手続、法的効力といった性質について、比較法史的な考察を行い、ひいては、閣議決定の政治過程全体の中における位置づけについて検討を行うものである。具体的には、(1)日本法について、明治憲法下の内閣制度創設時から今日までの、主要な学説と専門文献に当たるとともに、内閣官制や内閣法の制定当時の議論を探り、また閣議決定の運用からその政治過程全体の中における位置づけについても検討を行うとともに、(2)比較法について、諸外国の閣議決定に相当する決定の対象、手続、法的性質、ひいては政治過程全体の中における位置づけについて、訪問調査も行い明らかにしていく、というかたちで研究を進めるものである。 このうち(2)について、令和元年度に実施する予定であったフランスの現地調査をようやく今年度の2月に果たした。閣議の補佐を行っている政府事務総局の組織と運営、閣議の審議事項、閣議の準備手続、「閣議決定」の意味、政府提出法案の政府部内での作成過程、また、政府提出法案の議会における審議手続とその実態について、インタビューを行った。その結果、法令案に関するコンセイユデタの審査における書面が定式化されていること、大統領(府)との間の調整が制度化されていること、そして閣議はすでに実質的に調整済みの案件を確認する儀式的な場となっていることが明らかとなった。他方で、政府提出法案について政府部内の作成段階で与党議員が関与することは少なく、法案提出後の審議・修正が盛んであることも確認できた。 研究成果全体を通じて、英独仏日の閣議のあり方、それに密接に関わる政府部内での調整のあり方、また内閣提出法案の作成のあり方などについて、その異同がある程度は明らかとなった。
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