研究実績の概要 |
平成29年度は,1910-20年代のアメリカにおけるヘイト・スピーチ規制の動向の確認を行った。まず10年代の動きとして,映画『國民の創生』をめぐる議論を調べた。また,差別的掲示を規制するニューヨーク州の1913年の公民権法について調査した(特にこの法律の制定の経緯を詳しく論じるJeffrey S Gurock, The 1913 New York state civil rights act, 1 AJS Review 93 (1976)を精読した)。1920年代の重要な動向として,H. Fordが発行した新聞におけるユダヤ人差別の煽動の問題がある。これについては近時多くの業績が公刊されている。特にVICTORIA SAKER WOESTE, HENRY FORD’S WAR ON JEWS AND THE LEGAL BATTLE AGAINST HATE SPEECH (2012), HENRY FORD AND THE JEWS: THE MASS PRODUCTION OF HATE (2002)を中心に調べた。また,上記ニューヨーク州法の制定を働きかけ,Fordの新聞をめぐっても主要な役割を果たしたユダヤ人弁護士,L. Marshallの複数の伝記を収集した。このうち,特にMORTON ROSENSTOCK, LOUIS MARSHALL, DEFENDER OF JEWISH RIGHTS (1965)のみ詳しく読むことができた。この研究を通して,ユダヤ系の団体が当時ヘイト・スピーチに対してどのような方針をとっていたかを確認することができた。なお,今年度は集中的に全研究期間に用いる文献の収集を行った。概ね必要な文献を収集することができたので,次年度以降の研究の準備が整った。また,文献管理ソフトを用い,収集した文献の整理も進めることができた。
|