研究課題/領域番号 |
17K03376
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
奈須 祐治 西南学院大学, 法学部, 教授 (40399233)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヘイト・スピーチ / 表現の自由 / アメリカ合衆国憲法 / ヘイト・クライム / 違憲審査基準 |
研究実績の概要 |
平成30年度は,当初の計画のとおり1930-50年代のアメリカにおけるヘイト・スピーチ規制の動向を調査した。30年代の動きとしては,ドイツにおけるナチスの勢力拡大にあわせてアメリカでもナチス系団体が多数生まれ,カウンター勢力と衝突するなど数多くの騒動を巻き起こしたことが挙げられる。いくつかの州や自治体ではこれに対抗して法規制が行われた。これらの規制の具体的内容について調べるとともに,ニュージャージー州法を違憲としたKlapprott判決を詳しく考察し,判決を要約した。また,ナチスのような民主政の根幹を破壊しうる動きに対し,法規制により民主政を防御すべきと説いたカール・レーベンシュタインの論文を収集し,熟読した。1940代に入ってエホバの証人が各地でカトリック等を誹謗する街頭宣伝などを行う動きがあった。これにより生じた数多くの衝突事例を調べたうえで,連邦最高裁判例であるCantwell事件判決を詳しく検討した。また,40年代から50年代にかけて集団的名誉毀損法が各州で制定された。各法の主要部分の翻訳,解説を行う論文の閲読を行った。また連邦最高裁のBeauharnais事件判決の内容を,少数意見も含めて詳しく調べた。集団的名誉毀損法に関してはデビッド・リースマンの所説も検討した。さらに,この時期には連邦及び各州で十字架焼却規制法等のヘイト・クライム法の立法が始まっているので,制定の背景や立法過程を含め調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究では,1920年代以降のアメリカにおけるヘイト・スピーチ規制の歴史を概観することを計画しているが,平成30年度は上記のように1930年代から50年代の動向を調査することを予定していた。既に平成29年度に大凡必要な研究業績を収集し,整理できていたため,今期は上記のとおり計画どおり研究を進めることができた。また研究を妨げる特別な状況が生じることもなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まず平成31年度に継続して1960年代から90年代までのアメリカにおけるヘイト・スピーチ規制の動向を調査,研究する。その後,平成32年度に2000年代の動向を調べたうえで研究の総括を行う。平成31年度は公民権運動期のヘイト・スピーチ規制の動き,大学キャンパスでのヘイト・スピーチ規制論議等に焦点を当てていく。また90年代以降は重要な連邦最高裁判例がいくつか出されているので,詳しい検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画どおりの使用を行ったが,旅費が思いのほか安く済んだため,わずかに残額が生じることになった。平成31年度に旅費として使用する予定である。
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