今年度は、昨年度検討した多国籍軍型軍事活動の論文(「「被許可型」軍事活動における関係当事者の同意の意義-平和活動型多国籍軍の実効的実施に向けて」岩沢雄司・森川幸一・森肇志・西村弓編『国際法のダイナミズム 小寺彰先生追悼論文集』(有斐閣))を公表したのち、引き続き、多国籍軍型軍事活動の実践的意義と理論的問題点の検討を進めた。 他方、国際社会におけるグローバル・ガバナンスの観点から、国連PKOや多国籍軍型軍事活動の規範的規律が非拘束的文書により実効的に実施しうる可能性を探求するため、非拘束的文書そのものの特徴を検討する作業を行った。その成果の一部は、「国際裁判における非拘束的文書の役割と裁判所の機能」『国際法外交雑誌』第118巻2号として公表済みである。そこで得られた非拘束的文書の役割に関する知見を、国連PKOや多国籍軍型軍事活動を規律する非法的規範性を特徴としたそれぞれの活動原則に応用する作業を行い、その成果は近々論文として公表する予定である。 さらに、国連PKOや多国籍軍が現地で活動する中で、具体的にその行為を規律対象とする国際人権法や国際人道法を特定する作業も併せて行ってきた。その成果は、黒﨑輝編『防衛実務国際法』(弘文堂、近刊予定)の分担執筆として公表される予定であるが、その延長線上の作業として、刑事訴追、裁判権免除も含めた日本の国内法制とこうした法規範との関係を考察し、近々公表の予定である。
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