研究課題/領域番号 |
17K03388
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
黒神 直純 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (80294396)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国連 / 国連憲章 / サンフランシスコ会議 / 国連組織法 |
研究実績の概要 |
平成29年度においては、第1段階の作業として、国連憲章の起草過程の研究―前提的考察― を行った。国連憲章は、動態的な「生きた文書(living instrument)」であるといわれる。その動態的な性質のルーツを探るべく、憲章解釈のプロセス、総会や安保理等の主要機関の規範制定権限といった問題が、憲章の起草段階からどのように議論されてきたのかを調査・検討した。研究対象は、憲章が採択された1945年のサンフランシスコ会議および同会議により設置された準備委員会に関する1次資料や当時の議論、学説の研究が中心となった。 第1に、サンフランシスコ会議においては、とりわけ憲章の解釈権限について議論があった。例えば、総会または国際司法裁判所(以下、ICJ)が憲章解釈の権限を有するべきとか、総会と安保理が解釈するべきなど多くの議論がなされたといわれる。ところが結局、特定の解釈機関は指定されなかった。その結果、今日に至るまで各機関が自由に憲章解釈を行い活動を行ってきた。そこで、サンフランシスコ会議の議事録をひも解くことにより、さまざまな委員会で議論された主要機関による憲章解釈権限の問題につき、当時いかなる議論がなされたのかを網羅的に検証し分析した。 第2に、準備委員会は、国連創設直後、国連をどう動かすか、各主要機関をどう動かすかを議論した。第1回総会の開催に備えて、同委員会では綿密な議論がなされ、総会や安保理に対して、暫定手続規則を制定した。また、事務局に対しては、暫定職員規則を制定した。当時、主要機関を動かすために、それぞれの活動に関わる規則を制定することがまずもって必要とされたことがわかる。また、これと併せて、同委員会は、各機関に対して補助機関の設置も勧告した。これら当時の議論を網羅的に分析し、国連組織法の秩序が形成された端緒を探り出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究に必要な資料の収集がうまく捗った。、国連憲章の起草過程に関して、主として1次資料であるU.N.C.I.O.や国連憲章に関する種々のコメンタリーはもちろん、これまでの先行研究をかなり網羅的に調査することができた。具体的には、国連事務局関連の資料に関して、国内の研究機関や国会図書館、在京の国連広報センターなどを利用し収集に努めた。国連文書その他Official Document System(ODS)や、UNBISnetのような国連関係データベースをフルに活用した資料収集も行えた。 このように収集した資料を分析・検討することができたため、当初予定した計画通り、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第2段階として、規範形成に関する研究を実施する予定である。具体的には、国連の組織に関して、憲章を頂点としていかに法秩序が形成されてきたかを検討する予定である。機関が生み出すそれぞれの規則、つまり(1)成文法規範と、明示の成文法規範がなくとも一般に受け入れられた実行の積み重ねによる(2)不文法規範を研究対象としたい。 そのため、よりダイナミックな分析・調査を要するため、海外も含めた研究調査を実施していく予定である。
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