研究課題/領域番号 |
17K03393
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
最上 敏樹 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70138155)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国際法 / 補償的正義 / 国際連盟 / ファシズム / 国際主義 |
研究実績の概要 |
平成29年度前半は日本において文献および資料研究を行い、9月以降3月まで、2度に分けてバーゼル大学(スイス)ヨーロッパ研究所に滞在し、主として同研究所所長マドレーヌ・ヘレン教授との共同研究に従事した。直近の共同研究課題は、戦間期の枢軸国による国際機構ネットワーク形成過程の研究であり、日本・ドイツ・イタリアの協働関係の事実確定および分析である。その協働関係において第一次大戦以前の「国際主義」がいかにして壊され、あるいは逆に保存され再利用されたかを探る、独自性豊かな研究の基礎が固まりつつある。同時にそれは、戦間期ヨーロッパおよび戦間期アジアの平和的関係の破壊をも伴っていた。それゆえ、そこにおける「国際主義」の破壊した平和がそののちいかにして修復されていったかの研究でもある。すなわち、歴史研究であると同時に通時的かつ法的な補償的正義を考究するための作業を蓄積してきたと言うことができる。 このように、法律家と歴史家の異分野間の協働により、いくつもの新しい研究調査課題が発見されつつあり、当初想定していた以上に広い範囲にわたって研究が深められつつある。その過程においてとりわけ、ようやく研究の光が照射され始めた国際連盟について、いくつもの論題が設定され、新たな発見が加えられている。それによって明らかにされることの一つは、欧米諸国をはじめとする列強の植民地主義がいかに展開され、国際連盟の制度(特に委任統治制度)によっていかに変容していったか、という点である。それは形を変えて国際連合に受け継がれ、国際機構が過去の清算にどれほど有用であるかを計る試金石となってきた。この異分野間協力の可能性がきわめて大きいことを確信している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究状況は上記「概要」に記載のとおりであり、その限りでは「当初の計画以上」と自己評価することも不可能ではない。 他方、まだ独自研究も共同研究も進行中であり、成果を論文あるいは著書に結実させていないため、ひとまず「おおむね順調」と申告する。成果論文化を個々に行うほか、ヘレン教授とは共著を執筆し、予定としては今年度中にヨーロッパの出版社から刊行の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ヘレン教授(および同研究所の研究者各位)との共同研究が予想以上に生産的であると知ったため、今後は初年度以上に協働関係を深め、そのためにバーゼル大学の滞在もできる限り実施したい。幸い、同教授が国際連盟研究、戦間期研究、ファシズム研究、植民地化および脱植民地化研究において国際的に高名であり、それゆえ同研究所に世界各地から優秀な研究者も集まりやすいため、そうした人的な刺激も十分に活用する所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者となっている他の科研費からの支援も得られたため、当基金からの支出が予定より少なくて済んだため。
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