研究課題/領域番号 |
17K03396
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
前田 直子 京都女子大学, 法学部, 准教授 (80353514)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人権条約 / 国際連合(国連) / 自由権規約 / 政府報告(国家報告) / 建設的対話 / フォローアップ |
研究実績の概要 |
本研究課題は、国連人権諸条約の実効性向上に関し、国内的実施のみならず、制度設計の観点からも多角的に検討することを目的として、現在国連総会のもとで進められている「人権条約体強化」の議論動向を視野に入れつつ、国際法上の合法性・正統性の観点から考察することである。 平成29(2017)年度は、研究計画の第1段階として、「人権条約体強化」の議論に大きく関与している主体とその構成、問題の所在とその中核的論点についての把握に注力した。具体的には、①1990年代終わりから2000年代初頭にかけての「人権条約体改革」から、2010年代以降の「人権条約体強化」に至るまでの、法的・政治的背景とそれらの差異の確認、②「人権条約体強化」に関し(予想に反して)様々な国家の参画を得て、活発な議論が展開されている要因の特定、③前記①②と、人権条約体と締約国(当事国)との間の「建設的対話」醸成との相関関係に関する予備的考察、の3点から研究を進めた。具体的には、現時点の本課題に関する先行研究の収集(実際には、研究代表者の問題意識にそのままあてはまるものは僅少であった)、現地聴き取り調査などを行った。 これらの資料や情報と予備的考察をすりあわせ、第1段階の研究成果として英語論文を執筆・公表した(Naoko Maeda, "Forty Years' Practice of the UN Human Rights Committee for Implementation of the Covenant: A Universal Model for the Protection and Promotion of Human Rights", Japanese Yearbook of International Law, vol.60(2017), pp.212-242.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29(2017)年度に予定していた国内・国外における調査、予備的考察に関する研究成果公表のいずれについても、予定どおり実施することができた。 また本研究成果の意義として、公表論文(前記「研究実績の概要」)で指摘した、自由権規約における政府報告審査フォローアップ手続の課題が、その後、自由権規約委員会が当該手続の運用方法の見直し・修正を行ったことで、一定程度解消されるに至ったことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30(2018)年度は、前年度の考察対象であった政府報告審査フォローアップに関し、自由権規約委員会で行われた手続の運用見直しの結果(効果)について、国連人権高等弁務官事務所が提供しているデータベース等も活用し、追加的な調査を行う。また現地調査を実施し、人権条約体委員、各国政府関係者や国連関係者より、①「人権条約体強化」の議論動向、②人権条約体活動の合法性・正統性に関する問題意識、などについて聴き取りを行うことを予定している。可能な限り、それらの中間評価を、論文あるいは学会報告により公表の機会をもちたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主たる理由としては、物品費で予定していたパソコンの購入をH29(2017)年度は見送ったこと、旅費に関し出張は実施したものの、本務校用務等との兼ね合いで日程短縮を行ったことなどが挙げられる。 前者についてはH30(2018)年度に執行予定であり、後者に関しては、国内外の学会・研究会により積極的に参加するための旅費に充当する予定である。
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