令和4(2022)年度は、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策は徐々に緩和されたものの、本研究課題の調査地として想定していた欧州方面への調査出張は、ウクライナ紛争による航空運賃の高騰等の影響を受け、実現できず、基本的にはオンラインでの研究会参加や国内での文献調査、研究課題に関連する成果物の執筆を行うことが主たる活動内容となった。 国連における人権諸条約のモニタリング委員会(「人権条約体」あるいは「人権条約機関」)の強化については、2020年の国連総会決議後、総会や人権理事会レベルでの目立った進捗は見られない状況ではある。しかし各人権条約機関の活動は日々継続しており、財政的・人的リソースの不足がその活動に深刻な影響を与え始めていることが明らかになっており、人権条約機関の議長間会合が議論を深めるイニシアティブをとっていることが明らかになったため、同議長間会合の報告書等を分析する作業を進めた。 また拷問等禁止条約に基づき設置されている拷問禁止委員会委員に選出されたことから、各人権条約体や締約国、市民社会(NGO)の各アクターの意見動向についてもより詳しく把握できるようになったことは、本研究に対してもプラス材料となった。 現時点の1つの到達点として、人権条約体の実施措置の効率化・相互調整に関する議論を受けて、すべての締約国が、1つの条約に関して8年サイクルで報告審査とフォローアップ手続を受けるカレンダーの導入が議論されている。この点に関し、既存の条約規定との整合性や実施に向けての課題について、総括的な論稿を執筆中である。
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