研究課題/領域番号 |
17K03397
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
徳川 信治 立命館大学, 法学部, 教授 (60280682)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 欧州人権条約 / 欧州人権裁判所 |
研究実績の概要 |
本研究は、欧州人権裁判所と締約国との間における様々なチャネルを通じた対話の法的基盤とその実効性を検討することである。今次変革が著しい欧州人権条約システム、その司法機関たる欧州人権裁判所の機能に対して、対審による争訟管轄のみならず、締約国裁判所に対する諮問機能をも付与されようとしている。 こうした人権裁判所の機能の変化は、増加の一途をたどる申立件数への対処として説明されているが、他方で欧州人権裁判所の国際裁判所としての司法機能はこれまでとは異なる次元に進むことが予想される。この点に関する欧州評議会諸機関(閣僚委員会及び議員総会)、さらには締約国の各機関の間における判決およびその執行にかかわる取り組みと対話、さらにはその法的基盤を明らかにしようとするものである。 2019年度は、条約策定過程において示された国家の行動基準(実体規定上の義務)に対して各国家が解釈適用して、欧州人権裁判所の解釈適用とは異なる自らの行動を正当化する遠心的解釈に対して、欧州人権裁判所さらには欧州評議会各機関が条約上の義務を締約国間に均質化をもたらせるかという点について検討を加えた。条約実施機関や国際機関が示した国際手続きに関する変遷の中で、各国の憲法的伝統と国内事情を考慮しつつも、欧州人権条約の基準とのバランス、さらには欧州人権裁判所の積極主義的活動に対する制約についての攻防があったことがわかった。欧州人権裁判所が裁判官対話を通じて国内裁判所との間における欧州人権条約の解釈の均質化を図るとともに、他方で国内裁判所の活動を制約しうる立法府へのかかわり方について検討を深めた。それを踏まえて、研究成果の一部を国際法学会研究大会において発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各国の憲法的伝統と国内事情を考慮しつつも、欧州人権条約の基準とのバランス、さらには欧州人権裁判所の積極主義的活動に対する制約についての攻防があったことがわかり、この点のまとめを試みていたが、十分には到達できてはいない。また欧州人権裁判所裁判官経験者や欧州評議会事務局の方々とのヒアリングは、先方の都合でかなわず、具体的な国際機関側の動きについて探ることまではできなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
欧州評議会などにおいて、改めてこれまでの欧州人権条約をめぐる活動に対する振り返りが2019年において行われたところ、その点の動きについて丹念にフォローをしつつ、研究課題の最終年度であるため、これまでの研究成果の理論化を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ヒアリングを予定していた海外研究者との交流が相手方の都合により次年度で実施せざるを得ない旨連絡があり、また当初予定していた書籍購入未執行分が次年度に回ったことによる。ただし、新型コロナ感染症の拡大により、海外研究者の来日が不可能となったため、書籍購入未執行分を含む書籍購入に充てる予定である。
|