研究課題/領域番号 |
17K03401
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中川 晶比兒 北海道大学, 法学研究科, 教授 (20378516)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 協調的行動 / 水平合併 / tacit collusion / マーベリック / 非対称費用 |
研究実績の概要 |
今年度は協調的行動が懸念される典型的な市場構造を特定するため、ゲーム理論を用いたモデル分析を行った。その結果、同質財の数量競争市場では、上位二社の費用格差が特に小さい場合に、協調的行動が最も懸念されるべきであること、差別化財の価格競争市場では、二位以下の複数企業の費用格差が小さい場合に、協調的行動が最も懸念されるべき典型的な市場構造であることを示した。また、企業結合当事会社以外の企業(以下、「アウトサイダー」という。)が、なぜ企業結合を契機に協調的行動をとる誘因を持つのかという疑問には、経済理論の外で解明を試みた。アウトサイダーが退出企業よりも効率的ならば、協調的行動によって利潤が高まるグループに属するのか否かを、アウトサイダーも当事会社も知りうるから、企業結合を契機に、協調的行動のインセンティブが高まる。このような推測は、企業数が少ないほど容易となる。これらの分析結果については、英語論文にしてWorking Paperとして公表した。 研究から得られたその他の知見をとりまとめた。具体的には、(1)独立の意思決定の結果として横並び行動が実現されることは通常ありうるから、横並び行動に基づいて協調的行動の予測を行うことは慎重になるべきであって、少なくとも他の証拠による補強が必要である。(2)協調的行動について、我が国の企業結合ガイドラインでは、他社の値上げに追随することで足りるような定義を与えている。しかし、競争的な横並び行動との区別をするためには、他社も追随した場合に初めて実現できるような値上げといった、より厳格な定義を与えることが必要である。(3)協調的行動による競争の実質的制限の予測において、最も重視すべきは、費用の近さであり、費用格差がある程度あってもなお協調的行動が利益となる場合を最も懸念すべきである。
|
備考 |
Akihiko Nakagawa, Priorities in Coordinated Effects of Mergers, Working Paper (2023). <https://lex.juris.hokudai.ac.jp/~aki/materials/NakagawaPriorities2023.pdf>
|