本研究は、組織再編や倒産など企業の根幹を揺るがす大規模な「企業変動」が日常化する中で、企業変動に伴う労使間での利害調整の仕組みとして、伝統的な労使紛争の解決システムが機能不全に陥っている実情に鑑み、新たな労使間での利害調整メカニズムの探求を試みるものである。研究期間を延長して総括的研究に取り組んだものの新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う行動制限などを受け、特例として研究期間を再延長した本年度は、前年度末期の新型コロナウイルス感染症の再流行や大都市圏における緊急事態宣言の再発令により、満足に実施することを妨げられた本研究の最終段階として、実務者との協働の下、成果の取りまとめ作業に尽力した。 もっとも、本年度においても、年度初期から累次にわたって緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令され、本研究の肝とも言える実務者との協働作業を想定通りに進めることはできなかったが、新型コロナウイルス感染症の流行の長期化に伴い、前年度よりも対策が進められたことを活かして、オンラインでの意見交換など代替的な交流機会の確保に注力することで、結果として、本年度においても一定の成果を取りまとめて公表することができるに至った。また、新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いていた本年度中期には、研究の社会的還元作業の一環として講演も行った。こうして、労使間での利害調整過程を法的に可視化しつつ、わが国と同様に伝統的な利害調整システムが機能不全に陥っているアメリカの状況を比較軸として用いた利害調整モデルの構想を進め、最終成果として公表すべく準備を進めている。
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