研究課題/領域番号 |
17K03404
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水町 勇一郎 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20239255)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 労働法 / フランス法 / 労働者 / 労働契約 / 業務委託 / 独立自営労働者 |
研究実績の概要 |
フランスおよびヨーロッパの独立自営労働者の実態と法的問題について、文献収集および海外出張による聞き取りを行い、分析と考察を進めた。 とりわけ、2019年3月の海外出張では、Antoine Lyon-Caen氏(フランス労働法社会保障学会名誉会長、フランス国務院・破毀院法律顧問)、Pascal Lokiec氏(パリ第一〔ソルボンヌ〕大学教授)と面談し、フランスを中心としたヨーロッパ法の最新の動きと今後の方向性、および、日本とフランスの比較法的分析について、討議を行った。 これらの研究の中間的成果を、『「労働契約」概念の変容?―「プラットフォーム」型就業と「経済的従属性」』という題目の論文としてとりまとめ、近く公表する予定である。 その成果を要約すると、プラットフォーム・エコノミーを介在させた新たな労働者の登場と変容により、労働法・社会保障法規制の基盤にある「労働者」概念そのものが大きく変容しようとしており、その判断基準のあり方および新たな法規制のあり方について、判例や立法上、試行錯誤が続けられている。その基盤にある枠組みと実態は、フランスと日本である程度共通しているが、試行錯誤の状況や法規制の方向性については、両者の間になお一定の開きがある。 このような法状況を、さらに深く分析し比較法の見地から考察していくことにより、日本の今後の法規制のあり方についても重要な知見が得られるように思われる。社会保障法学の変容と再編等の研究テーマについて学術的な知見を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
業務委託、個人請負など非雇用型労働者への労働法・社会保障法の適用をめぐるヨーロッパと日本の現状と課題について、文献研究と聞き取り調査を進め、順調に研究を進展させている。 その中間的な成果についてのとりまとめも行い、近く公表する予定である。 厚生労働省「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」に委員として参加し、本研究の成果を、日本の非雇用型労働者に対する法律制度の設計のあり方をめぐる議論に還元している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度、2020年度においては、本研究をさらに進展させつつ、ヨーロッパにおいて、本問題をめぐる実態と課題、学術的知見についての訪問・聞き取り調査を行う。訪問先としては、フランス等のヨーロッパ諸国において大学・研究所、労働組合、使用者団体、労働法・社会保障法を所管する関係省庁の担当者等を予定している。 以上のプロセスで収集した文献・情報を読解・分析して整理し、研究結果をとりまとめる。研究成果については、Antoine Lyon-Caen氏等によるレヴューを受ける。 最終年度には、レヴューを踏まえて研究を総括し、日本の今後の制度設計への視点と具体的な示唆について本研究の最終的な成果をとりまとめ、公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本での業務等との関係上、海外出張の日程を短縮せざるを得なかった。2019年度以降の海外出張等において、その分の補足的な研究を行う予定である。
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