2019年度は、本研究の最終年度であり、2017・2018年度に研究した点を掘り下げ、さらに鳥瞰的な視点にたって全体の総括をすることを試みた。2018年度までの研究で、所得保障と医療保障の双方において、残された課題は、非常勤職員の処遇改善であることがわかった。国と地方自治体の双方において、多くの非常勤職員が働いており、その雇用の継続と所得の保障を進めていく必要性を検討した。 こうしたなか、2020年3月「国家公務員法等の一部を改正する法律案」が国会に提出されたが、検察庁をめぐる問題などから廃案となった。本法案は、国家公務員の定年を60歳から段階的に65歳へ引き上げるもので、年金の支給開始年齢に対応しようとするものだ。2008年の国家公務員制度改革基本法においても65歳までの定年延長は盛り込まれており、国家公務員の定年延長は、党派を超えて長年議論されてきた課題であった。他方で、国等で勤務する短時間労働者に対した国家公務員共済の短期給付を適用するという点についての改正を含めた「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第40号)は、今国会で成立し、6月5日公布された。 本研究では、日本における公務員の老後の所得保障と就労及び医療について研究し、2019年度は、法改正に向けた議論を追いかけた。これを受けて、さらにアメリカの議論と比較しつつ日本の課題を浮き彫りにすることを試みた。しかし、新型コロナウィルスとの関係で、3月の渡米は叶わなかった。このため、本年度も研究補助者の協力をえて、アメリカの議論状況についてさらなる文献検索を行った。また、オンライン通話を利用してアメリカの研究者などと意見交換した。本年度は研究の最終年度であり、新型コロナウィルスをめぐる状況が落ち着いた暁には、こうした研究成果を公表したい。
|