研究課題/領域番号 |
17K03413
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石田 眞 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 名誉教授 (80114370)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 労務供給契約 / 労働法 / 企業組織 / 雇用・就労形態 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本における19世紀から21世紀にかけての労務供給契約(他人の労働力の利用を目的とする契約)に対する法規制の歴史を、それぞれの時代の企業組織や就業形態のあり方との関係で検討することである。 交付申請書に記載した<企業組織の変動>と<雇用・就業形態の多様化>の二つの視角から導かれる「労務供給契約に対する労働法的規制の3段階モデルに即して、平成30年度においては、平成29年度に行った19世紀(明治期)から20世紀初頭(大正期)にかけての労務供給契約に対する法規制の展開過程に関する研究をまとめることに注力した。 その結果、明治期から大正期にかけての労務供給契約に対する法規制の展開過程に関しては、島田陽一・菊池馨実・竹内(奥野)寿編『戦後労働立法史』(旬報社、2018年)の第Ⅰ部「戦後労働立法史の歴史的前提‐戦前の労働立法史」の第1章「戦前における労働立法形成の歴史的前提‐労働関係における市民法秩序の形成」において、太政官布告、職工・徒弟条例案、明治民法における労務供給規定の成立の分析を行い、第3章「戦前の雇用関係立法」においては、鉱業条例・鉱業法と工場法の検討を行い、それらを世に問う(刊行する)ことができた。 なお、平成29年度から続けている21世紀(現代)における最先端の労務供給契約であるプラットフォームを介したクラウドワーク契約については、それを国際比較に耐えるプラットフォームワーク契約と定義し直し、同契約に対する法的規制の課題についても検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書に記載した平成30年度の研究実施計画は、主として、「第2段階(20世紀)後半期における労務供給契約に対する法規制の歴史的研究を行う」ことであった。しかし、第1段階(19世紀後半)と第2段階(20世紀)前半における労務供給契約に対する法規制として扱う対象が、太政官布告、職工・徒弟条例案、明治民法、鉱業条例・鉱業法、工場法と広範囲に広がり、それぞれについての歴史研究を、先行研究も踏まえながら相当に深く行ったため、それらの研究成果を世に問う(刊行する)ために、それなりの時間を要してしまった。 また、現状でも、明治前期(維新法期)における太政官布告等が労働紛争の解決にどのように機能したのかの分析を日本国際文化研究センターのデータベースにある民事判決原本を使って行っている。そのため、さらに時間を要しているが、もしこの分析が出来れば、明治期における労務供給契約に対する法規制の歴史分析に新しい知見をもたらすことができると考える。 いずれせよ、現在の研究の遅れには、それなりの理由があるので、その点を考慮しつつ、最終年度での研究のまとめに向けて、最大限の努力をして行きたい。
|
今後の研究の推進方策 |
平成31年度(令和元年度)においては、①20世紀前半までの労務供給契約に対する法規制の歴史的展開を、明治期の民事判決原本を使った分析も含めまとめるとともに、②20世紀中葉以降、すなわち戦時期から戦後期にかけての労務供給契約に対する労働的規制の展開過程への本格的な分析に歩を進めることにする。また、③21世紀(現代)における労務供給契約に対する労働法的規制の課題については、引き続き、プラットフォームワークにかかわる契約分析を行うとともに、それに対する労働法的規制のあり方も検討する。 上記の研究課題について、若干の解説を加える。上記②の対象となる時期は、「垂直統合型」の企業組織を前提とした労働法の本格的な展開をみる時期であり、その中で、労務供給契約に対する労働法的規制がどのように展開していったのかを検討することになる。具体的には、明治民法制定以降の雇傭契約概念に関する判例法理の展開と労働基準法制定以降の労働契約概念に関する判例法理の展開の関係、労務供給契約の当事者である「労働者」「使用者」と労働法規との関連などが検討課題になる。 上記③との関係では、プラットフォームワーカーの労働者性が検討課題となる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成30年度の研究では、関連書籍・資料の支出が当初予定したほどにならず、翌年度に4万円ほどが繰り越しになった。 (使用計画) 平成31年度(令和元年度)は、繰越分を含んで必要な関連書籍・資料を購入する。
|