本研究の目的は、日本における19世紀から21世紀にかけての労務供給契約(他人の労働力の利用を目的とする契約)に対する法規制の歴史を、それぞれの時代の企業組織や雇用・就業形態のあり方との関係で検討することである。 交付申請書に記載した<企業組織の変動>と<雇用・就業形態の多様化>の二つの視点から導かれる「労務供給契約に対する労働法的規制の3段階モデル」にそくして、2019年度においては、①第1段階(19世紀)における労務供給契約に対する法規制の展開過程に関する研究を続行すると同時に、②第3段階(21世紀)におけるプラットフォーム労働に対する法規制のあり方および労働法との関係についての検討をおこなった。 その結果、上記①については、明治維新から明治中期にかけての労務供給契約をめぐる紛争に対して裁判所がどのような判断を下していたのかに関し、国際日本文化研究センター所蔵の民事判決原本データベースを使って「雇人」についての128件の裁判例をダウンロードし、その全ての翻刻を完成した。 また、上記②については、最先端の労務供給契約であるプラットフォームを介した契約形態に関して、かかる契約形態と労働法との関係に関する国際比較の分析枠組みの検討をおこなうと同時に、プラットフォーム労働に対する法規制の課題を検討した。
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