最終年度である2021年度についても、やはりコロナ禍の影響を受けることになったが、地道な文献蒐集を行うことを中心としつつ、これまでの研究をまとめることに注力することにした。 本報告書執筆時点までの研究成果としては、所属する学部の「名城大学法学部創立70周年記念シンポジウム」の講演を元にまとめた、柳澤武「超長寿時代の労働法制」名城法学71巻2号15-25頁(2021)がある。同論文には、コロナ禍前に行ったアメリカでの現地調査の知見や比較法的な観点も取り入れつつ、高齢者雇用と解雇法制との関係についても示唆している。また、「コロナ禍を理由とする有期労働契約期間中の整理解雇」法学セミナー799号137頁(2021)は、判例解説を通じて、整理解雇法理と雇用調整助成金との関係、さらには救済されうべき賃金相当額(休業手当相当額か賃金全額か)といった諸論点を検討した。さらに、『労働判例百選[第10版]』(有斐閣、2022)では、「業務命令――国鉄鹿児島自動車営業所事件」を担当し、判決当時は認識されていなかったパワー・ハラスメントという問題を孕んでいることを指摘した 主に学生へ向けて書いたものとして、「法学科目のススメ 労働法・社会保障法」法学教室487号別冊38-41頁(2021)があり、親しみやすいマンガやドラマを紹介しつつ、社会法学の面白さと広がりを伝えた。 最後に「日本型定年制度と高齢者雇用政策」企業年金493号18-21頁(2021)では、日本型高齢者雇用政策の特質を一般向けに解説し、社会一般への情報発信も行った。 今後、これらの業績以外にも、いくつかの研究成果を公表できる見通しである。
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