課徴金制度の改正を内容とする令和元年独占禁止法改正法が2020年12月に全面施行された。本改正には、これまでの本研究の成果が相当程度反映され、指摘していた規定の改廃による合理化が図られた。一方で、調査協力減算制度という新たな制度が導入されるなど、課徴金制度に重要な変更が加わることになった。また、優越的地位の濫用に対する課徴金算定の規定解釈が問われたラルズ事件東京高裁判決において、本研究において指摘してきた解釈上の問題に関する初めての司法判断が下された。 こうした改正法および下位法令・ガイドラインを点検し、単著『課徴金制度』(第一法規、2020年3月)では十分に取り扱うことのできなかった点に詳細な検討を加え、新たな制度を踏まえた課徴金の法的性格への影響や今後の運用上の課題等にも触れながら制度全体の総点検を行ってきた。一方で、優越的地位の濫用を含む不公正な取引方法の課徴金制度研究として、単著「第20条の6」『論点体系 独占禁止法[第2版]』(第一法規、2021年5月)とともに、ラルズ事件東京高裁判決の評釈研究として、単著「優越的地位濫用の認定手法と課徴金算定上の問題:ラルズ事件(東京高判令和3・3・3)」NBL 1207号(2021年12月)がある。いずれも、本研究目的を達成するために発表した成果の中でも、科学研究費補助金による本研究の成果を最も端的に表すもの であり、本研究の重要な成果の一つといえる。 さらに、本研究のテーマとの関連性は直接的ではないが、共著「2021年学界回顧 経済法」法律時報1171号(2021年12月)では、エンフォースメントに関する1年間の論考全てを整理・評価して網羅的な検討を施すなど、課徴金制度の法的位相を確認したものである。
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