研究課題/領域番号 |
17K03419
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
所 浩代 福岡大学, 法学部, 教授 (40580006)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 同一労働同一賃金 / 性差別 / 男女賃金格差 / カナダ法 / 同一価値労働同一賃金 / ペイエクイティ / プロアクティブアプローチ / 女性労働 |
研究実績の概要 |
本研究は、イギリス、アメリカ、カナダのペイエクイティ法の特徴を整理し、同一価値労働同一賃金(または同一労働同一賃金)の規範の中で、許される賃金格差(格差の正当化要素)の範囲や根拠を探求することにある。 新型コロナウィルスの蔓延により、3カ国の現地調査は現段階でも十分に実施できていないが、その代わりとして、ヨーロッパやカナダで開催されたオンラインワークショップに積極的に参加して、各国の最新状況や法制度のトレンドの把握につとめた。ワークショップなどで得た知見としては、欧米では、ペイエクイティを男女間だけではなく、人種、国籍、移民の地位など他の属性にも拡大する動きがあり、さらに、同一価値労働同一賃金規範の実効性を高めるために、ペイ・トランスペアレンシー(pay transparenncy,賃金透明化)に向けた情報開示義務を使用者にかす実践が普及していた。 2021年度は、上述の欧米のトレンド調査をと同時に、カナダのペイエクイティ法の発展経緯や、オンタリオ州、ケベック州、連邦の異なる法管轄におけるペイエクイティ法制の仕組みを詳細に調べて、論文にまとめて公表した。ペイエクイティ法は、使用者に格差是正計画(ペイエクイティプラン)の作成・実施を義務付けることが特徴であるが、近年は、個計画の進捗を監視するプロセスの重要性や、計画作成プロセスに労働者や組合が関与することの重要性が再認識されている。この点は、日本法制の仕組みを作る上で示唆的であり、最終年度の総括報告を作成する際に記録したい点と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年は、イギリス、アメリカ、カナダの法制度を包括的に検証する予定であったが、イギリス法の研究があまり進んでいない。各国の法制度の整理に向けての文献収集などは概ね完了しているが、それらの分析に時間を要している。また、賃金格差の正当化に関する判例研究には、もう少し時間を要する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、3カ国の判例研究に力を入れ、賃金格差の正当化理由の整理と分析に関する知見をまとめる予定である。また、今年度は研究計画最終年度となるので、研究成果を論文にまとめる必要がある。すでに、複数の外国人研究者と共同で本を出版する予定があり、その本において、本研究の成果を公表する予定である(英語論文)。この執筆にあたり、編者の方と、カナダで8月に打ち合わせを行う予定がある。また、論文執筆にあたり、複数の研究会で構想報告をし、その過程で、いくつかの日本語論文も執筆する計画がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症の蔓延のため、外国での現地調査計画が遅れている。渡航制限が緩和されたので、本年は8月にカナダに滞在し、現地の研究者と意見交換する予定である。また、英語論文の公表が控えているので、翻訳業者のサポートを受けるための費用のために予算を温存している。
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