研究課題/領域番号 |
17K03423
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樋口 亮介 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (90345249)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 性犯罪 / 共同正犯 |
研究実績の概要 |
2021年度は、前半に性犯罪について、また、後半には共同正犯について包括的な研究を進めることができた。 性犯罪については、1月に刑法学会関西部会の共同研究において、比較法的知見に基づいて日本の判例の特徴を明らかにした。その上で、法学セミナー誌上で開始した連載「裁判実務と対話する刑法理論」において、性犯罪を取り上げ、過去5年の裁判例についてデータベースで入手できたものを全件調査し、処罰を基礎づける実体法的視点を整理した。とりわけ、暴行が性行為に通常随伴する行為まで包含する現状において、物理的・心理的強制が問題になっていることを明らかにするとともに、抗拒不能要件の中身として、服従心や信頼の悪用、精神障害や酩酊へのつけ込み、虐待の延長といった形で処罰を左右する具体的な視点を明らかにすることができた。 共同正犯については、本科研でこれまで培ってきた知見を前提に、1年強の裁判例を網羅的に調査し、基本的な方向性を整理した。準備にあたっては、裁判実務家が参加する研究会における報告を繰り返し行うことができた。内容的には、実行共同正犯と共謀共同正犯を区分し、また、支配型と分担型を分けるという標準的な整理を理論化するものになった。 さらに、共同正犯研究の一環として、2021年5月にオンラインで開催された日本刑法学会の分科会1「特殊詐欺と最高裁判例」において、特殊詐欺のかけ子・受け子が裏切った場合に他の関与者が責任を負うかという問題を取り上げて検討することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
法学セミナー誌上で包括的な裁判実務の分析を進める機会が得られることは想定外であった。また、連載の企画の一環として、繰り返し、一線級の実務家からコメントを得られることによって、進捗が格段にスピードアップしている。
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今後の研究の推進方策 |
法学セミナー誌上における連載が継続予定であるため、引き続き、本科研に合致するテーマを選んで取り組む予定である。具体的には、共同正犯を継続する他、正当防衛、責任能力を想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの蔓延が続き、予定していた出張による研究会参加や謝金の支払いが全てキャンセルになったため。 余剰分については、次年度、研究を推進するための書籍やパソコン機器に使用するほか、感染が改善すれば出張に使用する。
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