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2022 年度 実施状況報告書

刑法解釈に基づく刑事要件事実論の研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K03423
研究機関東京大学

研究代表者

樋口 亮介  東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (90345249)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2024-03-31
キーワード共同正犯
研究実績の概要

共同正犯について、実務家との共同の勉強会を基礎にする形で裁判例の網羅による実体法上の判断ポイントの整理を進めることができた。
作業の前提として、2021年度に近時の裁判例において、依拠している実体法の枠組みがあまりに多岐にわたり、統一性を欠いていることを実証的に示すことにした。それに加えて、2022年度には輸入罪に限定する形で30年にわたって検証した結果、犯罪の共同を処罰するという基本的な思考枠組みを保持する裁判体と、その思考枠組みを放棄している裁判体と、そもそも実体法の思考枠組みを示さない裁判体に分裂しているという非常に問題がある状況が明らかになった。
そこで、犯罪の共同を処罰するという思考枠組みに立ち戻った上で、多岐にわたって共同正犯を認めている現状に相応する形で複眼的な言語化を試みた。具体的には、一体性を形成しているような関係性という視点からどこまで共同正犯を認めることができるか、上下関係の形成により実行犯より軽い罪責評価がふさわしくない上位者を共同正犯にするという視点がどこまで妥当するか、実行共同正犯に準じるような行為分担者といえる範囲がどこまで及ぶか、というものである。あらゆる事案に通有する視点として提示したが、特に、輸入については受領者を準実行共同正犯と位置づけることで実体法上の混乱が回避できると期待している。
また、これらの理解を前提にした包括的共謀と共同正犯の解消についての学会報告を公刊することもできた。
責任能力について、刑事裁判官、精神医学者と協働する形での成果を提出することもできた。
共同正犯以外には不法領得の意思について、近時の裁判例がかなり混乱しているとの問題意識から、学説史を重点に置きつつ、判例に通底する基本思想としての所有者的振る舞いという視点の析出を試みた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

共同正犯については当初の想定以上に網羅することができた。特に、伊藤嘉亮准教授が全面的に協力してくれたことにより、ネット関係の共同正犯現象の整理も進んだ。
責任能力について、精神医学者との共同研究の公刊は想定外であった。
また、不法領得の意思については本来予定外で、高裁裁判例の登場をきっかけに研究を進めることができた。

今後の研究の推進方策

責任能力について、実務家と協働する形で裁判例網羅を予定している。
また、学説の現状把握について特集を予定している。

次年度使用額が生じた理由

コロナの影響で予定していた出張がほぼ消滅した。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (5件)

  • [雑誌論文] 類型論に基づく共同正犯の構造化(その4・完)2022

    • 著者名/発表者名
      樋口亮介
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 67巻4号 ページ: 118-126

  • [雑誌論文] 薬物輸入の罪における共同正犯(その1)2022

    • 著者名/発表者名
      樋口亮介
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 67巻7号 ページ: 93-99

  • [雑誌論文] 不法領得の意思 : 比較法と学説史を通じた議論の整理2022

    • 著者名/発表者名
      樋口亮介
    • 雑誌名

      研修

      巻: 891 ページ: 3-32

  • [雑誌論文] 責任能力判断の実践的検討(下)2022

    • 著者名/発表者名
      大野 洋, 酒井 孝之, 清水 拓二, 長谷川 英, 五十嵐 禎人, 樋口 亮介
    • 雑誌名

      判例タイムズ

      巻: 1496 ページ: 68-83

  • [雑誌論文] 特殊詐欺における包括的共謀と抜き事案における共同正犯の成否2022

    • 著者名/発表者名
      樋口亮介
    • 雑誌名

      刑法雑誌

      巻: 61巻2号 ページ: 324-342

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公開日: 2023-12-25  

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