研究課題/領域番号 |
17K03434
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
森川 恭剛 琉球大学, 人文社会学部, 教授 (20274417)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | USCAR刑事裁判所 |
研究実績の概要 |
本研究の対象は、琉大付属図書館で保管されている1948~72年の「米軍政府/琉球列島米国民政府(USCAR)裁判記録」の刑事裁判の記録であり、2018年度は、このうち1950年と1954年以降の記録について事件目録を作成する作業を行った。 その結果、冊子化された裁判記録は全部で935冊があり、そのうち907冊分は1998年にマイクロフィルム化されたが(リール数72、総コマ数180,488)、『USCAR APPELLATE COURT』『USCAR SESSIONS COURT Traffic Case』等と表題の付された28冊はそれから漏れたこと、1965~66年の2年分は刑事裁判の記録自体がないこと、67年からの刑事裁判記録の大半は米国籍を有する軍属・家族が被告人である裁判に関するものであり(これを収録するのが『USCAR SESSIONS COURT Traffic Case』の18冊である)、主に沖縄の住民を対象にした64年までの記録とは性格が異なること、そして50年以降の刑事裁判記録は各Caseに対して年毎に通し番号が付されており、また58年以降は上級裁判所と下級裁判所を区別してそれぞれに通し番号が付されていること、但し50年代までのものについては一定期間内または同日中に審理された複数の事件をまとめて1つのCaseとして整理されていることなどが明らかになった。 ともかく、こうして全体のCase数が把握できたので、他の資料(琉球警察統計書や米国民政府活動報告書等)と照らし合わせ、沖縄戦後史を刑法的な観点から振り返ることの刑法理論的な意義を考えることを目的として、2019年3月の九州刑事法研究会で「戦後沖縄米国刑事裁判記録の研究(中間報告)」と題して報告を行った。 また、今後の調査研究のために試験的に1954年の記録をPDF化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は戦後27年間沖縄を統治した米国が沖縄住民に対して刑罰権力を行使した方法を明らかにすることであり、そのためには、まず、その刑事裁判記録の全体像を提示し、次に、具体的に設定されたテーマに即してその記録を分析する必要がある。そして前者は、この裁判記録を広く研究利用に供するための準備作業であるだけではなく、それ自体において戦後沖縄/日本における米国の刑罰権力という新たな研究対象を拓くという意義がある。 2018年度に前者の事件目録化の作業を集中的に進めたことで、たとえれば、未踏峰の頂点を見ることができたといえる。つまり、残りの3年の研究期間中に実際に頂点に到達し、全体を視野に収めてこれを分析する研究に着手できそうであるという見通しを得ることができた。 また、沖縄住民に対する米国の刑罰権力をテーマとする本研究の現代的意義についても「正当な理由が『ある』のに―日米地位協定刑事特別法2条の適用違憲論―」神戸学院法学47巻4号で論じることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1949年と1951~53年の4年分の記録の整理を進める。また、作業の進捗状況について琉大付属図書館に報告を行い、最終的にどのような形において事件目録を本研究の成果物の1つとして提出するかについて協議する。これを踏まえ、作成済みの事件目録に修正を加えていくことになるが、そのためにはもう一度全記録に目を通す必要がある。これを2020年度以降に行いたい。 PDFにした54年の記録についても、その利用方法について琉大付属図書館と協議する。51~53年の記録の整理を進めることで、54年の記録を分析する視点を明確にすることができると予想している。この結果次第でPDF化の範囲について検討したい。 なお、裁判記録の原本の所在確認についても進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予算施行したILL賃借返送料について残金が生じたため。
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