研究課題/領域番号 |
17K03439
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
井上 正仁 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授(任期付) (30009831)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 裁判員 / 国民参加 / 証拠法 / 刑事司法 |
研究実績の概要 |
本研究は,2009年の裁判員制度の実施を契機として,英米法系諸国の陪審制度の下におけるのと同様,刑事証拠法の存在意義が従来にも増して大きくなっていることから,そのような構造的変化に照らし,わが国における既存の刑事証拠法の理論とルールが裁判員制度導入後の刑事裁判に果たして適合的で,かつ十分なものといえるかどうかについて,根本的な見直しを行い,あるべき方向性を探究することを目的とするものである。そのため,初年度の平成29年度においては,①英米法系諸国を中心に,国民の司法参加制度を採っている諸外国の法制や運用の実情について調査・分析するとともに,②わが国での裁判員裁判のこれまでの実施状況とそこから浮かび上がってきた証拠法上の課題について整理し,また,③近時の最高裁判所の関連判例・裁判例の意義とその後の実務への影響について分析する作業を行い,①については,資料・文献の収集・整理が相当程度進捗した。また,②および③についても,これまでの研究の成果を基に,裁判員裁判の実施状況について,データを最新のものに更新し,かつその収集範囲を拡張するとともに,最前線で裁判員裁判に携わる実務家等から実情を聴取するなどし,これの作業の結果を反映させてさらなる分析を加えることにより,理解を拡充することができた。後者の成果の一部は,平成30年1月に国際連合アジア極東犯罪防止研修所の高官セミナーで行った英語での講演「Citizens' Participation in Criminal Trials and Reformation of Criminal Justice in Japan」(近く公刊予定)や,同年5月に台湾台南地方法院で行った講演「裁判員裁判と上訴」などで公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外の資料・文献の収集について,一部刊行の遅れや,発注した文献の到着が大幅に遅れたことなどにより,計画通りに進まなかったところもあるが,それ以外は,おおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には,29年度に行った作業をさらに続行するとともに,調査の対象を,英米諸国のみならず,ヨーロッパ大陸諸国や韓国などにも拡げ,問題分析の基礎情報と視点の拡充を図る。調整がつけば,いくつかの国の実地調査を実施することも検討中である。 最終年度の平成31年度には,それらの各作業を完了させるとともに,その結果を踏まえて,既存の刑事証拠法の李とんとルールにつき根本的な見直しを行い,裁判員裁判時代のあるべき方向性を検討し,その成果の高官に向けた準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
収集ないし購入を予定していた海外の資料・文献の一部につき,刊行の遅れや発注・配送上の支障のため,平成29年度中には入手するに至らなかったことが主たる理由である。残額と平成30年度分の補助金を合わせ,さらなる国内外の資料・文献の収集・整理のために支出するとともに,調整がつけば,韓国または欧米諸国における刑事裁判への国民参加制度の実情について実地調査を行うための費用に充てることも検討中である。
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